
06
「アルマ=カルマは生きてたんだよぉ! 死に損ないとして、九年間も教団に利用されてた!」
呆然としたままのわたしを嘲笑うかのような、甘ったるいノアの声が、辺りに響く。広い研究室の中に、彼女の高い声が反響して聞こえた。
あの時、アルマは死んでいなかった。
心の底から楽しそうに、愉快そうに、ケラケラと笑いながら語る人形の姿をしたノアを、ユウが握りつぶした。
ノアはそれでもまだ、何かを言っている。動揺するユウに、アレンくんが駆け寄っているらしい。
けれど、わたしはそんなことどうでも良かった。アルマが、ここに居るのだ。
アルマが、生きて、そして、こんなにも無残な実験の素体として、利用されていた。わたしはそれを、なんにも知らなかった。
あの時、彼は確かに動かなくなった。ユウと六幻が、確かに、アルマが死ぬまで破壊し尽くした筈だ。そう考えて、愕然とした。
なんで今まで思い至らなかったのだろう。あの時、アルマに破壊し尽くされ、それでもまた立ち上がったのは他でもないわたしじゃないか。
あの時は何度も何度も再生を繰り返したせいでいつもなら高々と上がる煙すらも弱々しく、だるい体はピクリとも動きそうになかった。
けれども、いつも以上に時間をかけてわたしの体は再生したし、わたしは今ここで、生きている。
あの時動かなくなったアルマが実は生きていた、という可能性も全く無いわけではなかったのだ。わたしもユウも、ただそこから目を背けていただけなのだ。
「アルマは、生きていたの?」
わたしの呟きは予想以上に大きな声で、隣にいたアレンくんは勿論、きっとユウにも届いただろう。彼がわたしの言葉を否定しようと口を開いたのがわかった。
しかしユウの声よりも先に、この不気味な空間に響いたのはさっきと同じ、甘く高いノアの声だ。
「そう、生きてたんだよ。第三使徒の母胎として、アクマと融合させられて。−−ずっと此処で、お前の代わりをさせられてたんだ」
「わたしの、代わり?」
「お前は何にも知らないんだねぇ。神田ユウの方は知ってたんでしょ?」
ノアの言葉に耳を貸すな、とユウが冷たく言った。
心臓はいやにどくどくと大きく脈打っている。何だかとても、怖かった。
どういうこと、と私が聞くよりも早く、ノアは嬉々として言葉を発する。
「神田ナノ、本当はお前が第三使徒の母胎になる筈だったんだ」
頭が、聞こえてくる言葉を理解することを拒んでいた。
はっきりと突きつけられたそれは、どうしようもないくらい私に答えを教えてくれていた。
「うそ、」
「嘘じゃないよ」
「そんなの、エドガーもトゥイも、なにも」
「二人とも、どうしても信じられないみたいだねぇ」
なら、「アルマ自身に信じさせてもらえ!」と、人形が叫んで、地面が眩しく光って、不思議な模様を浮かび上がらせた。不気味なその光に目が眩んで、思わず目を閉じる。
次に目を開いた時には、眼下にはあの、御戸代の世界が広がっていた。