「ちょっとスパンダム! ……いくらここが不夜島だからってねぇ」
そう言ってスパンダムの部屋へ入る私の格好は、パジャマにカーディガンのみ。
寒いったらありゃしない。
そう心の中でぶつくさ言い、私をこんな時間に呼び出した張本人の所へさっさと歩いていった。
部屋の中は、カチカチと深夜2時の時間を針が刻む時計の音しかしなく、その時計の隣のベッドで上半身を起こしているスパンダムは無表情に近い表情で私を見ていた。
「……外は明るいのよ? 分からない?」
私が「はぁ」っと少し大袈裟にため息をつきスパンダムのベッドへ座ると、彼は何も言わず私を抱き締めた。
「ちょっ、スパンダム?! ……どうしたの?」
抱き締めた途端、固まったように動かなくなった彼に私は穏やかに、まるで子供をあやすように言った。
「う、うるせェ。……名前この仕事辞めちまえ」
「はぁ? なんでそうなるの?」
彼はどういう考えでこの結論へたどり着いたのだろう。
「ゆ、夢……」
「ゆめ? ……それがどうかした?」
彼がポツリと言ったそれはゆめという単語で、私はその先を優しく聞いた。
「……夢みたんだよ。お前が、名前が死んじまう夢を」
「……!」
その先はとてもリアリティーのある内容だった。
それはそうだ。私の仕事は政府の暗躍機関だ。いつ任務で殺されてもおかしくない仕事だ。
「……スパンダム」
彼もそれを分かっている。だからそれが怖いのだ。
たかが夢だが、その夢が現実になるかもしれないからこその恐怖。
「私嫌よ。……辞めるなんて」
「……おれだって嫌だ」
「だったら」
スパンダムのだだっ子のような回答にやや眉を下げ困ってしまった私は、次の彼の一言で更に困ってしまう。
「だけどよ、おれ名前が死んじまったら……生きてけねェよ」
「っ……それは私も一緒よ」
私はスパンダムに抱き締められていた腕に自分の腕も絡め、このだだっ子によって速められた心拍数をどうやって静めようか困った。
-END-