コーヒーの香ばし香りのするこの部屋で、私はなんとも言えない気持ちで新聞を眺めていた。
その私の隣では旦那が、仕事の資料か何かを真剣に読んでいた。
彼のそんな姿は格好いいなんて少しノロケてみた。だが私の手元にある新聞の記事を見れば複雑な気分に変わった。
モヤモヤとした嫌なものが気分を暗くさせる。そう思ってふーと鼻でため息めいたものをつくと、よしっ!っと隣の彼に言った。
「っね、ねぇ。スパンダム……これはやり過ぎだわ」
パサリと新聞を彼に見せれば、みるみるうちに眉間に皺を寄せた。
「うるせェ! なんも分かんねェお前がこのおれに意見するなっ!」
勢いおく椅子から立ち上がった彼は、テーブルにカダンと手をつき怒鳴った。
ああ、やっぱり。怒鳴られてしまった私はビクッと肩を震わせたが、最初から分かっていた事なので仕方ない。
「……ごめんなさい。謝るからそんなに怒らないで」
宥めるようにして言えば彼はムスッとした顔のまま椅子に腰掛けた。
ナニが違うのだろうか?
私と彼……旦那の間に違う‘正義’のカタチがあるのかもしれない。
だけど、それは時に私からスパンダムを遠ざけてしまう。
私は歪んだ正義を持ってしまったスパンダムが怖くて仕方がない。
「おい、名前。コーヒー……淹れてくれ」
また資料を読み出した彼は、ひょいっとコーヒーカップを私に差し出した。
「えぇ。すぐ淹れるわね」
カップを受け取った私はふっと笑いながらそれにコーヒーを入れに席を立った。
“歪み”が彼の中から消える時、私の好きなスパンダムに戻る。
「はい、スパンダム。……溢さないでね」
カップを渡し少し意地悪く言ってみた。
「わ、わかってるよ」
吃りながら受け取った彼の指は少しばかり震えていた。
「ふふ」
今日も彼がコーヒーを溢さないようにして飲むのを、私は見つめるのよ。
-END-