Her head was spinning with confusion and fatigue.

 頭が付いていかない。
 今の私は正にそれだ。

「ほら! さっさと歩け!」

 腕を乱暴に捕まれ、ズルズルと引っ張られるようにして歩く私は、ただ呆然と隣に……いや、私を囲うようにしている男性達の言うことを聞いていた。

「い! っ痛いです!」

 小さく抗議の声を上げるも、煩い黙って付いてこいと一喝された。

「……」

 どうする事も出来ないこの状況に私は、先程の事を思い出した。


 あれから私は、この聖地マリージョアへ辿り着いたという知らせをスパンダムと呼ばれていた男性の部屋へ報告しにやって来た海兵という人達に取り押さえられ、不法侵入者として“海楼石入り”の手錠を掛けられ尚且つ縄で縛られ船を降ろされた。
 船を降り暫くその場で何か海兵たちが色々とやり取りをしていた。

 その時ちらりと見えたが、スパンダムと呼ばれた男性は担架のようなもので何処かへ運ばれた。私がそれをじっと見ていると、一瞬その男性と目が合ったような気がした。


「おい! とろとろ歩くな!」
「わっ!」

 先程の事を思い出していたら、真後ろにいた海兵の男性に怒鳴られ、背中をどんっとやや強い力で押された。
 頭の中に気をとられていたので、急に真後ろからの大声に驚きそして、押されたことによりフラりと足元をふらつかせた。

 ヨロリと倒れそうになるも、後ろ手に手錠を嵌められた腕を乱暴に引かれ、前へ倒れるという最悪な事態にはならなかった。倒れてしまえば多分私は顔面から地面へダイブしていただろう。そんな事にはならなかったが、嵌められている手錠が手首に尋常ではない程食い込み、その痛みで顔が歪み一瞬その大声を上げた男性を睨みそうになった。





 それから連れていかれるまま歩いた状況だったが、暫くして私を取り囲むようにしていた男性達が皆立ち止まった。それに吃驚して目の前の背中に一瞬ぶつかりそうになったがなんとかそれを避けた。どうやら目的の場所へ着いたようだ。

「……入れ」

 目の前の男性がこちらに振り返り、機敏な動きで扉を開け、私に入るよう促した。

「……は、はい」

 いつの間にか取り囲むようにしていた男性達が離れ、私の後ろで姿勢を正して整列していた。
 心臓の煩く跳ねる音を聞きながら、その部屋へ足を踏み入れた。そして私がその中へ完全に入ってしまうと、バタリと後ろで扉の閉まる音がした。その音に異常ではないくらい心臓が飛び跳ねたが、それ以上に、目線の先に大きな机を挟んで座っている男性と目が合いその気圧に押されそれどころでは無くなった。

「……君の話しは部下の者から聞いた」
「!! ……は、はい」

 静かな室内でその人が話す言葉全てに重みがかかった。
 私が今まで体験した事のない緊張と戦っていると、いきなりその目の前の男性が「こちらへ座りなさい」と今まで気付かなかったが、数歩歩いた所にあるソファーへと私を促した。
 いきなりの事で一瞬頭がついて行かなかったが、素直に言うことを聞きそこへ座った。未だに海楼石入りの手枷と縄は嵌められたままだ。


「……まず最初に君の名前を聞こうか」
「っ#name2##name1#です……」

 何故だ。私何も悪いことしていないはずなのに、何故か怒られているみたいな気分だ。凄く恐い。

「#name2##name1#……」

 その人は私の名前を復唱し、考えるように腕を組んだ。

「単刀直入に聞こう。君は何故あの場所にいた?」
「!! ……そ、それは」

 本当に単刀直入だ。
 一番聞かれたくない質問をぶつけられた。第一私だって何故今この場合にいるのか分からないし、本当に私が想像した場合だとするならそれは実にあり得ない事で。

「……君の身分を証明出来るモノはあるかね?」
「え、あ。はい、それなら……」

 と言いかけて自宅まで持っていた鞄がないことに今気が付き動きを止め、一瞬身体中からぶわりと嫌な汗をかいた。
 不自然に動きを止めた為か目の前の男性が不審そうに眉を寄せ目を細めた。その動作にビクリと肩を動かした時、後ろ手に手枷で繋がれていた指先に何かがコツリと当たった。
 それにスルリと指先を這わすと、私が何時も使っている財布であることに気が付いた。

「こ、……ここにあります!」
「!」

 急に大声を出した私に、目の前の人物は目を点にして「あ、ああ。そうか」とやや戸惑ったように言い、私は今まで気付かなかったが背後に立っていた海兵の男性に、私のズボンの後ろポケットにある財布を取るように指示した。

「す、すまんな。……失礼する」
「……すみません」

 私を立たせてそれを取った人はやや気まずそうにそれを男性に渡した。

「この中の……どれだ?」
「あ、一番手前に差し込んであるヤツです。写真付きの」

 財布の中のカード類を見せられそう伝えると、男性はそのカードをあの海兵に渡した。その海兵はそれを受け取ると、扉まで行きこちらへ敬礼すると出ていった。

「……。で? 話してもらおうか。何故あの場所に?」
「っ!」

 完全に気を抜いていた私は、またこの話しに逆戻りしてしまった事に落胆した。
 やはりここは避けられないのか。

「……お、覚えていません」
「……。なんだと?」

 嘘をついた。今までの人生で嘘は幾らかついた事はあるが、これ程まで緊張した嘘はついた事はない。

「っ覚えてないんです。……アルバイトを終えて、自宅へ帰宅しようとしたんですが……自宅の玄関を開けた途端気を失って」
「それは本当の話しかね?」

 腕を組みこちらを見つめるその目は、私を疑っている目だった。

「はい」

 その目を見つめ平然と嘘をついた。だけど、真実も混じっている嘘だから完全な嘘ではない。なんて狡い考えだ。

「……もし君の話が本当なら、私達は君を保護しなけらばいけない」
「保護……ですか?」
「ああ」

 保護という言葉に少しながら安心していると、私の視界の端に何か黒いものが見切れた。それをチラリと見ると、そこには保護という言葉が監視に変わる人物がいた。

「あ……!!」
「? どうかしたのか?」
「!! い、いいえ」

 炎のアタっちゃんことアタッチがそこにいた。彼は海軍本部所属の手配書カメラマンだ。彼がいるという事は、もし私が下手な事を言ってしまいこの人達に怪しませるようなことがあれば、撮った写真で何時でも手配書に出来てしまうということか。 何も海賊だけが手配書にされる訳はないんだ。願わくはサンジと時のようにレンズの蓋を取り忘れていてくれ。
 っと願いそうになった所ではっとなった。はたしてここは本当に私が想像した場所そのものなのか?

「あ、あの! 私から質問してもいいですか?」
「ああ。いいだろう」
「ここは何ですか? む、麦わらって誰ですか?」
「はぁ?」

 他に聞きたい事は山ほどあるが、まずその2つを聞くのが
先決だろうとそう聞いた。

「君……。まぁ、いいだろう。ここはレッドラインという世界を別つ壁の上に位地する聖地マリージョアと呼ばれる場所だ。だが、今いる場所は……これはまたにしよう。そして麦わらとは、一括りにすると海賊だ」
「海賊……聖地マリージョア……レッドライン」

 ひとつひとつ言葉にしてみてもやはりあの世界で、とてもじゃないけど頭がついていかない。

「君が今並べた言葉に覚えは?」
「あ、ありません」

 また嘘をついた。だけどそれは仕方ない。こればかりは本当の事なんて言えない。


 状況を飲み込もうと頭を整理していると、やや乱暴に扉を叩く音がした。

「失礼します!」

 先ほど出ていった海兵が一度敬礼をして入ってきた。そして男性にこそりと何かを渡すと、こちらをチラチラ見ながら男性に耳打ちした。

「……。ああ、分かった。もう下がれ」
「はっ!」

 男性の一言でまた敬礼をして扉へ向かった海兵に「あともう少し静かに入れ」と仕方ない奴だという声の混じった言葉を投げ掛けた。それに答えるように「失礼しました!」と入ってきた時よりもデカイ声で帰って行った。

「すまんな、うるさくて」
「へ? い、いいえ!」

 少しどぎまぎしながら答えると、先ほどより柔らかい笑みを向けられた。

「それでだ。……君のことだが、保護及び監視になった」
「か、監視ですか」

 監視という言葉で空気がヒヤリとなった。

「君が先ほど渡してくれたこのカードだが、このカードに載っている住所をダメ元だが調べた。そしてやはりこのカードに載っている住所及び人物は存在しなかった」
「っ!!」
「この部屋には君が来る十分前程に盗聴電伝虫を仕掛けていてな、なので君が喋ったこと全てが上の者に筒抜けになっている」
「っ! 筒抜け?!」
「これは私達の中で当たり前なんだ」

 さっきまで落ち着いていた心臓がドッドッドっと早く脈打った。

「たが、こちらとしてみればまだ君が何者か分からないので保護という形をとらせてもらい、その中で監視をするというのが上の判断だ」
「は、はい」
「では、行こうか」

 そう言うと男性はソファーから立ち上がり、背もたれに掛けてあった正義のコートを羽織った。

「え! ど、どこに?」
「……歩きながら話そう」

 困惑している私をゆっくりと立たせて扉まで連れて来られると、この部屋へ入ってきた時のように男性に扉を開けてもらい私はその先へと足を伸ばした。
 また後ろで扉が閉まる音がしたが、今度は吃驚より困惑のほうが上回り、肩を上げる事はなかった。

 次々と起こる周りの出来事に、頭がついていかなくなってきた。
 そして何よりあの紫色の髪の人は今どうしているのだろうとふと思った。



to be continue…,

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