何度か聞き間違いを疑った。
でもその度に私の目の前の仗助くんが首を縦に振る。

「私、結婚してるよ?」

「知ってます」

「仗助くんの.....甥の、何ていうか、姪?でもないけど...」

「わかってます」

どうしたらいいんだろう。私は困惑していた。仗助くんが私のことを、す、す、好きだと言った。
別に仗助くんがふざけてるとかじゃない、のは、分かる。
私も20年は生きているわけだし、告白くらいされたことはあるのだ。一応。
とすれば私からするとこれは正真正銘の愛の告白ということで、それは、もちろん私には何もできないけど.....(だって結婚しているんだから)
それでもこの仗助くんは、私に自分のことを打ち明けてくれた。
ごくり、と生唾を呑んだ。

「う、うん。あの、.....よかったら、教えて欲しいな。仗助くんの気持ち、もう少し、だけ」

ここでの正解がわからない。
一体どうしたらいいのか。もちろん付き合ってくれと言われたら「ノー」と答えるつもりのなまえだが
交際を申し込まれた訳でもない。

「俺....初めて会った時からなまえさんのことが好きで、承太郎さんの奥さんだって知ってからもなまえさんのことが好きだって気持ち....どうしても抑えられなくて、....せめて、告白するだけなら言いんじゃねぇかって勝手に思って今こんなこと言ってます。」

「仗助くん....」

まだ少し恥ずかしそうに、でもしっかりと話してくれる。
なまえも仗助のそんな姿勢に、少しでも応えたいと思った。

「なまえさんにとっては迷惑でしかない、っスよね、こんなの。ほんと、なんて言ったらいいか....」

心臓がギューッと掴まれる。
切ない。なんて切ないんだろう....。
なまえは辛かった。それでもこの、仗助の告白はなまえにとっては嬉しかった。自分は嫌われていなかった。
好いていてくれる人がいて、嬉しい。


「仗助くんありがとう....嬉しい。私も仗助くんのこと大好きだから....お友達としてもだし、家族みたいな存在としてもだし、.....もちろん男の子としても魅力的な人だなって思ってる。」

でも、私には承太郎がいるから。
承太郎のこと、好きなの。

私は心の中でそっとこう続けた。

仗助くんは私に優しく笑ってくれた。
そしてあとからやってきた億泰くんを、二人でにこにこしながら迎えた。



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