「あっ、すみません!」
考え事をしながら道を歩いていたら誰かにぶつかってしまった。
実はピンクダークの少年の6巻を買おうか悩んでいたのだ。仗助くんには「わざわざ買うより、露伴のヤローに言ってやりますよ!」なんて言われたけどそんな申し訳ないことは出来ない。
私はとりあえず本屋さんに行こう、と歩いていた。
アッと振り返りぶつかってしまった相手に謝って、その場を立ち去ろうとする。
しかし背を向けた瞬間、何か、視線を感じた。
「あの、何か....?」
「いえ....失礼します」
変な人だ。私は首を傾げた。今確かに、私のことを見ていた気がした。
考えすぎだろうか....。
頭を横に振りながら、私は駅の方へと歩いて行く。
すると今度は、見覚えのある後ろ姿を見つけた。今日もまた、よく分からないが面白い恰好をしている。
「露伴先生、こんにちはっ」
「..........」
何の反応もない。何をしているのか露伴先生は壁からこっそり誰かを尾行しているみたい。
気になる...。何をしてるんだろう。
露伴先生の目の前にパッと回り込んで「こんにちは!」と声をかけると、パシャっ!という機械音が目の前で鳴った。
目をパチパチしている私に、露伴先生がやっと口を開く。
「ああ、貴女か。見ての通り僕は忙しいんですがね?」
「こんな場所で写真を撮って、資料ですか?」
「漫画家が写真を撮る時はだいたいが資料のためですよ。さあ、分かったら僕の仕事の邪魔はやめてくれ。」
「お仕事熱心なんですねっ」
なまえはにこにこと微笑む。
その笑顔が偽物か本物かがわかる露伴はなまえを邪険には出来ず、チッと舌打ちをした。
「(あァ、なんか強く言えないンだよなこの女には....)」
撮った写真が見たい!と言うなまえを必死で止め、頼むから向こうへ行ってくれと願う。
そして最終的には露伴が、ピンクダークの少年を全巻なまえに貸し出すという約束まで取り付けられた。
そこに満足したのかなまえは「先生、ありがとうございます」と嬉しそうに帰って行ったので露伴は一安心した。
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