「なまえさん!」

「仗助くん、え、なにっ」

「ケーキっス!なまえさん今、あんまし外に出れないって承太郎さんから聞いたんで....」

仗助から照れ臭そうに差し出されたのは小綺麗な袋だった。なまえにはそれが、大好きなケーキ屋のものだというのが一目で分かる。

「、〜!嬉しい!」

感激で胸がいっぱいになったなまえは思わず仗助にバッと抱き付く。

「な、っ」

「ありがとう....!」

嬉しくて仕方がない。なんで仗助くんってこんなに優しいんだろう!
なまえはふにゃふにゃと締まりのなくなった顔で何度もお礼を言いながら笑った。

「あ、そうだ、モンブランって...モンブランってあるかな?」

「わ、なまえさんモンブランが良かったんスか?俺、てっきり紫芋のタルトのほうが良いかと....」

「いや、私じゃなくて、モンブランを食べたい人がいてね....食べさせてあげたくて」

脳裏に浮かぶのはジョセフおじいちゃんのことだった。きっと仗助くんが買ってきてくれたケーキ、なんて言ったならおじいちゃんは私よりも嬉しくって仕方ないだろう。

「.......ンじゃあ!行きますか!俺と一緒なら大丈夫っスよ!
承太郎さんには俺が怒られてあげますから!」

仗助くんがニコニコと笑ってくれる。
そのかわいさにつられて、私も楽しい気分になってきた。



「どこに行くって?」

「じょ、」

承太郎。
仕事が終わったのか、承太郎がすぐそこに居た。時計をチラリと確認してもまだ午後13時。忘れ物でも取りに来たのだろうか。なまえの笑顔が苦笑いに変わる。

「なまえ、お前俺が言ったことをぜんっぜん分かってねーようだな」

「、ご、めん」

「承太郎さん、俺が言ったんです。なまえさんは何も悪くないっスよ」

なまえはバツが悪そうに目を逸らした。仗助はそんななまえを見て心が痛み、承太郎の前に自ら出て行く。
そのことがさらに火に油を注ぐ結果を生むということに、ここではまだ仗助は気付かない。

「お前は黙ってろ!!!」

「なッ、」

「じょ、承太郎!仗助くんに対してそんな言い方はやめて!」

なまえが二人の間に割って入っていくと、承太郎に腕を掴まれる。

「.....中へ入りな。なまえ。お前の部屋には鍵をつけるぜ」

「っ!?」

「行くこたァないっスよ、なまえさん。」

そして後ろからは、反対の手を仗助が掴んだ。

「(えっ、仗助くん....)」

「俺も今はカチンと来てますよ。アンタ、なまえさんのこと何も考えてねぇんじゃねぇの?」

「今すぐその手を離せ仗助。俺はお前を殴りたくはねぇぜ。」

「はァ、そっちがそう来るなら俺だってやってやりますよ」

とんでもない状況になってしまった。
なまえにスタンドが見えないことが唯一の救いであった。
承太郎の背後ではスタープラチナが、そして仗助にはクレイジーダイヤモンドが既に対峙していた。




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