「なにしてやがる」
「け、け、決して怪しいものではございません!」
私は目の前の人にとにかく必死で謝る。けれどこの人は完全に私を養豚場の豚を見る目で見ている。
あああどうしよう。
今回は男の人だった。死にたい。
「テメェは誰だ、どっからきた」
「あの、その、なんというか私....こういうスタンド能力なんです....」
「!スタンドだと.....?」
男の人が私を見る表情が変わった。
ひしひしと伝わってくる「警戒」の二文字が息苦しい。
そう、私は少し変わったスタンド能力を持っている。
それはどんなものかというと、お風呂に入ると他の誰かのお風呂場にテレポートできてしまうというものである。
最初にこの能力が発現した時、私はちょうどお風呂で足をつって、溺れ死にそうになっていて必死でもがき苦しんだので
もしかしたらそれが原因?なのかも知れないと最近は思いはじめた。
「こういうわけですので......その、だ、だから貴方を傷つける気はまったくないので安心してください」
「.......そんなスタンドがあるのか」
男の人はすごく不審そうに私を見ていた。
それもそうだよね....。
「はいっ、シャンプー!リンス!」
「!」
私がそう叫ぶと、すぐにブクブクブクと音を立てながら私のスタンド達が現れた。
シャンプーはピンク、リンスは水色をしているのでどちらがどちらなのかが分かりやすい。
ちなみに今はこのように分離しているけれど、元々はリンスインシャンプーだったので一体に戻るときは紫色になる。
大きさは普通のシャンプーボトルより一回り大きいほどだが、見た目はなかなか可愛い。
「どうやって来たのかは分かったぜ。だが、なんだってテメェはここに来た。」
「どこに行くか....というのはどうもランダムみたいなんです。実はそこに問題がありまして....どうも何回テレポートしても自分の家に帰れない。」
「なんだと、」
男の人は目を見開いた。
「わけの分からんスタンドだな....」
「というわけで私は、テレポートし続けるしかなくて、こうして毎回、同じような説明を皆さんにしています。」
幸いなことに、見た目よりは優しい人だったらしい。
男の人は特に私を怒らずに「やれやれだぜ」と私の言うことを信じてくれたのでホッとひと安心だ。
とりあえず今日はもう疲れたので、空条さん?(と名乗っていた)のお部屋で眠らせてもらい、翌朝に私はまたお風呂から別のお風呂へ移動することになった。
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