イシュマウリさまは、とても綺麗なひとだ。清廉で、それから洗練された感じがする。数多のかがやきを凝縮して磨きあげられたダイヤモンドのような。なんとなく、だけど。というのも、彼は、わたしと出会う前のことを滅多に語らないのだ。ただひとつ確かなのは、いまこのとき、彼のうつくしさだけ。
それに比べて、わたしを特徴づけるのは、役立たずな棒切れのような脚だけだ。棒切れのほうがまだ薪にすることもできて、使い道があったかもしれない。生まれつき足がわるかったわたしは両親に疎まれ、町の裏にある山の、見晴らしのいいところに建てられたロッジで祖母と二人暮らしをしていた。わたしの足が普通だったら、なんてもう何回考えただろう。嘆くわたしに祖母はきまってやさしく微笑んで、「足がわるくたって、あなたにはできることがあるのよ」とわたしを抱きしめてくれた。
祖母の死後も、ひとりには広すぎるこのロッジに、わたしは住んでいた。祖母と暮らしていた頃からそうしていたように、畑には月が満ちてゆくときに種をまいて、祖母が大事にしていた花たちの世話もわすれなかった。ただ、足のせいでロッジ裏手の雑木林の手入れだけは難しくて、そこの木々たちはどれもぼさぼさ頭になってしまったけれど。
空気の澄んだ、満月の夜のことだった。おおきな月明かりにおもわず目が覚めて、寝室にしている屋根裏部屋でわたしはからだを起こした。何気なく部屋を見回して、わたしは驚いて息をのんだ。窓の格子の影が長く伸びて、屋根裏のななめになった壁のところに扉をつくりだしていたのだ。わたしはおそるおそる、その扉を開いた。きっと外では、生前の祖母が大好きだった月下美人が花を咲かせている頃だろう。
「ようこそ、私の世界へ」
これが、イシュマウリさまとの出会い。
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