影山と敗北

「悪い、お前との約束…守れなかった」


下を向きながら、悔しそうに唇を噛み締めながら、彼は私にそう言った。


「見てたよ」

「…知ってる」

「及川先輩、やっぱり凄い人だね」


私がそう言えば彼は更に表情を歪めていく。


「でも、私は飛雄くんが一番かっこいいって思ったよ」

「別に、そういうお世辞はいらねえよ」

「お世辞に聞こえる?飛雄くんは私がお世辞言える人だって思ってたんだ」

「………」


黙ってしまった飛雄くん。それを見てクスクス笑う私。


「ねえ、ちょっと屈んで欲しいな」


すると不思議そうな顔をしながら飛雄くんは屈んでくれる。その飛雄くんの頭を優しく撫でてみた。


「なまえ…?」

「頑張ったね飛雄くん。お疲れ様」


そう言葉をかければ飛雄くんは私の腕を引いて私を抱きしめる。すっぽり収まってしまう私は抵抗はしない。


「私との約束なんてあんまり気にしなくていいよ。飛雄くん自身のバレーをしてくれれば、私はそれでいいから」

「…春は、」

「うん?」

「春は必ずなまえを全国に連れて行く。及川さんにはもう負けねえから…だから…及川さんのところにだけは行くな…」


普段の飛雄くんからは考えられない言葉が出た気がする。いつもは強気で意地悪ばっかり言ってくるのに。


「行かない。私が好きなのは飛雄くんだよ」


顔を上げて言えば飛雄くんの唇が私の唇に重なる。それはすぐに離れて、また重なって。

飛雄くんにしては優しいキスだった。


「春高、期待してる」

「ああ」


太陽に反射してあんまり見えなかったけど飛雄くんは笑っていた。



【ルピナス様から相互記念!】