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おっすオラ今をときめく高校生探偵、工藤新一の守護霊!
アポトキシン4869とかいう毒薬を飲まされて縮んでいたご主人が、やっとこさ完成した解毒剤を飲んで眠りについてはや2日!起きる気配皆無!
高校生が小学生まで逆戻りするなんていうアンビリバボーな体験をしたご主人が前世で一体何をやらかしたのかすごく気になる日々!
「灰原、俺の頭はイカレちまったらしい」
とかなんとか言っていたらご主人が起きたー!ヒャフー!と思ったらベットに逆戻り。
これにはさすがに焦ってご主人のそばを離れないように、寄り添う。事件と悪霊ホイホイなご主人はいつなんどきたりともその魂を狙われているのだ。ガチで。
ご主人が幼い頃はもう大変だった。
無意識のうちに悪霊ごと事件をホイホイするもんだから、寄ってきた悪霊をちぎっては投げちぎっては投げの繰り返し。
子供の守護霊ごときに多勢に無勢な連中だったりもしたけど、ここでやられたら確実にご主人がダークサイドに堕ちると思ったから死ぬ気でコテンパンにした。
そういえばもう死んでた。うっかりうっかり。
「コーラル、」
目が覚めたご主人はなんとびっくり、見えないはずの存在である自分の守護霊が見えるようになっていた。
気味悪がるわけでもなく、至ってすんなり守護霊という存在を信じたご主人は途中から何かを悟ったような顔をしていた。多分宇宙の真理とかそういう壮大なこと。
そして嬉しいことに、ご主人は"俺"に名前をつけてくださった。ありがとうご主人!この推理オタク!幼馴染み泣かせ!馬に蹴られろ!とか思っててごめんね!
名前の由来はひどく単純、だけどそれがいい。
俺、もといコーラルはそれからというもの家事スキルをメキメキと上げていった。そういえば俺ってばご主人と同じ顔してんのね。鏡にうつらないもんだから分かんなかった。
名前をもらったことで有機物無機物に触れるようになったのはすごい収穫だ。ありがとう灰原女史。俺あなたに一生ついていく。ごめんもう死んでた。
呼ばれたから振り返ると、ご主人が怪盗キッドからの予告状片手にウキウキしていた。
事件吸引体質のご主人が、ひとえに発狂してないのは、とことん謎を愛しているからだと俺は推測している。
考えてもみろ、外に出りゃ死体とこんにちわ、下手すりゃ外に出なくてもこんにちは。
普通の高校生なら発狂してもおかしくない。
このままだとご主人、謎と結婚しそう。やばいフラグ建てた。
ご主人は俺を触ることは出来ない。だからか、どうしても俺の格好が気になるみたいだ。
イタリア国家治安部隊、カラビニエリの制服。生前の職業とかでは断じてない。俺の趣味。
以前、ご主人が相見えたルパン三世とかいう泥棒の守護霊殿が教えてくれた。
さすがは世界的な大泥棒、世界各国の警察やそれにお宝、ルパンの一味が繰り広げてきた冒険を面白おかしく話して聞かせてくださった。
ふとした拍子に、セクシーダイナマイ峰不二子の守護霊殿が、俺にはこの格好が似合うと言ってくれたんだ。
それ以来、誰に見られるわけでもないのにこの格好をしている。
ご主人は俺のことを世話焼きでお節介だと思ってるみたいだけど、こっちから言わせたらご主人の方こそ世話焼きでお節介だ。
だってこの前怪盗キッドの目的なのであろう宝石、パンドラ?だったか?についてやたら熱心に調べてたし。
FBIにCIA、ICPO、公安にまでコネを持つ高校生だ。
見つかるのは時間の問題だと思う。
だというのに、怪盗キッド本人にはそのことを欠片も漏らさないのだから、ご主人が何をしたいのか守護霊分かんない。
「予告があったの、今日だっただろ?お前も来い」
そんな俺にも密かな楽しみというものはある。かの大怪盗、怪盗キッド(の守護霊)との逢瀬だ。
「あー、悪い悪い、キッドじゃなくてキッドの守護霊に、だったな」
怪盗キッドじゃない、その守護霊にだとぷんすこ怒る俺は、言っちゃあなんだがキッドの守護霊とめちゃくちゃ仲良しだ。
ご主人がまだコナンの頃に出会ったのだが、びっくりするほど話があった。
お互いの主人の愚痴で盛り上がるうちに、親友レベルにまで到達した。今ではキッドの守護霊も俺とお揃いの格好をしているくらい。
ご主人は俺以外の守護霊の姿はぼんやりとした光、というふうにしか認識できていないようだが、キッドの守護霊は俺とクリソツ、つまりご主人ともクリソツなわけで。
会うたびに怪盗キッドとご主人の血縁関係を疑ってみちゃったりする。
見える人が見たら多分四つ子。楽しい。霊感ある人いないかな。
そして何より、ご主人が自分から外に出ようと言うのは珍しい。
必要最低限の外出はするが、基本的にご主人は外に出たがらないのだ。
以前、何の心構えもせずにふらっと玄関から外に出たご主人が、引き寄せられてきた悪霊に驚いて扉を一旦閉めた。
なんだなんだと覗いて見たら、玄関から1歩出た先でうじゃうじゃと悪霊がホイホイされていたのでパパッと掃除して戻ってきた。
そしたらご主人に信じられないようなものを見る目で見られた。
ご主人、忘れてるかもだけど俺一応幽霊の類だからね。普通見えないからね。
それでも不安そうなご主人に、大丈夫だ、という意味で二の腕パシーンって叩いたら、またあの顔された。
宇宙の真理とか悟った顔。
ご主人ってば日頃からそんな難しいこと考えてるのかな。
目をはなすとご飯は食べない睡眠は取らないご主人にきちんとした生活をさせるため、せっせこせっせこ働いていたら、訪ねてきた灰原女史が膝から崩れ落ちたこともあった。
ご主人がちゃんと起きて朝食をとっている姿にこの世の終わりを感じ取ったらしい。
ご主人が心配ばっかりかけるから!
「私があんな薬を作ったから……!」
違うよ灰原女史!
アポトキシン4869は確かに毒薬だけど、あの薬のおかげでご主人が出会えた人達もたくさんいるんだ!
ご主人もコナンが嫌いなわけじゃないし!
それに灰原女史が悲しんで自分を攻めているのは違うって、前に説明されたでしょ!
コーヒーでも飲んで落ち着いて!
しっかし、そんな俺の些細な楽しみを邪魔してくる輩もいるわけで。
ご主人が気を使って、キッドとの会話を伸ばしてくれているというのに乱暴な登場をしようとするもんだから、1回やってみたかったドロップキックをお見舞してやった。
テレビでよく見るプロレス技もマスターしたいから、今度から彼らが来たら練習台にさせてもらおうと思う。
俺が気絶させたヤツらのことは、キッドの守護霊も気に入らないらしく、タンスの角に小指ぶつけて銃を使おうとしたら暴発する呪いかけてた。
前半かわいいのに後半が笑えない。
それに気付いたご主人がまた悟った顔をしていたので、俺としてはもっと会話を楽しんでおけばいいのにと思う。
「よぉ、怪盗キッド。今夜こそお前を巨匠にしてやるよ。」
ひっさしぶりー!元気にしてたー?
「これはこれは名探偵。わざわざご足労いただき、ありがとうございます」
ご主人も相変わらず元気に事件ホイホイしてるし、元気だよー!
「……………」
え、俺に相談?いいよ、どうしたの?
お互いキメ顔でセリフを言い合うご主人たちの、そのちょうど真ん中あたりの場所で所構わずほのぼのと談笑する俺たちに、ご主人は怪盗でもないのに表情筋を凍らせてポーカーフェイスに努めているようだ。
「勘弁してくれよ……」
俺と同じ顔のくせに、とご主人が何度目かのため息を吐き出す。
ごめんご主人。だって楽しい。
その言葉に、驚いたように目を瞬かせた怪盗キッドがいたことにご主人は気付いていない。
驚いて、切なそうに目を細める大怪盗の姿。おおっと、これは。
『『勘違いの気配を察知』』
それを見た俺と、怪盗キッドの守護霊の呟きが重なるのはもはや必然だったんだ。