ずるいから好きです







ふわり、ふわり

優しく髪を撫でる感触

暖かくて、心地よくて、

ほのかに香る煙草の匂いは私を落ち着かせる

その愛しい存在を確かめたいから、私は目を開けた

「ん………」
「ふ、やっと起きたか、寝坊助」
「…バリケード……?」

なんで私の部屋にいるんだろう?
昨日、バリケードは昨夜から任務があったから共寝はしてないはずだ。まさか無くなったのだろうか?微睡みの中でそんなことをぼう、と考えながら少し細められた美しい紅の瞳を見つめる。

「今日はお前がデートに行くと言っていたからわざわざ出向いてやったのに、まさか寝坊とはな?」


今日 デート 寝坊


「…………え!?」

先程の眠気はどこかへ飛んでゆき、一気に頭が覚醒した。デートの約束は来週だった気がするが、どうやら私の勘違いだったようだ。
今何時!?待ち合わせは9時00分だから……うそ、もう30分も過ぎてしまった!

「ごめんバリケード!今すぐ準備するから待ってて!!」
「やけに必死だな」
「当たり前でしょ!?すっごく楽しみにしてたんだから!」
「へぇ?……ま、ちなみに本当は来週だけどな。」
「……な、!?」
「くく、お前学習能力無さすぎ。何度俺に騙されれば気が済むんだ?よく考えてみろ、お互いの予定が合わない日にデートの約束なんてするわけないだろ」
「〜〜〜!!」

悔しい。非常に悔しい。
その勝ち誇った顔がかっこいいのも悔しい。

「お前ってホント飽きねぇな」
「バリケードの意地悪!嘘つき!!」
「でも、惚れてんだろ?」
「う……」

いつも通り完全敗北である。バリケードは何においても口が上手すぎるのだ。

「それと、必死になって気づいてないみたいだけどな、」
「きゃ、」

バリケードは私をベッドの上に押し倒し、にぃと意地の悪い笑みを浮かべる。

「お前、今自分がどういうカッコしてる分かってるか?」
「え……?」

───────!?
さっき急いで着替えてる途中だったから……!
私は掛け布団をかき集めてできるだけ体を隠した。

「ま、待って!今着替えるから見ないで!」
「は?今更何言ってるんだ。今まで何度も見てきてるんだから別にいいだろ。」

かあぁ、と顔に熱が集まるのが分かった。
どうして彼はこうも恥ずかしいことをいとも簡単に言ってしまうのだろうか。

「……だ、だって今は朝だから、明るいし……」
「うだうだうるせぇ。黙らないならイタズラするぞ」
「何言っ、ん……!?」

バリケードはこれ以上喋るな、と言わんばかりにいきなり口付けをしてきた。彼とのキスは甘く、優しく溶かされていくようだ。だんだん体の力が抜けてゆく。その隙を見て、バリケードはいとも簡単に肌を隠していた布団を剥ぎ取ってしまった。

「ふぅん?黒か、悪くない。」
「ひぁ、」

バリケードの白くて細長い指がブラストラップをつつ、となぞった。直接そこには触れず、時間をかけてじっくり焦らすのがバリケードのやり方だ。
いつの間にか両手首は上で拘束され、脚の間にはバリケードの片足がしっかりと入り込んでいる。

やばい、この流れ…このままでは本当に食われてしまう…!私はこの窮地を打開するため、必死に話を変えるための話題を考えた。

「バ、バリケード、待って……」
「無理」
「即答すぎる!」
「お前の待てはもっとシてだろ」
「ち、ちがうもん!!……じゃなくて、その……今日は会う予定立ててなかったのにどうして朝からここに?そもそも今日の非番が決まったのも昨日のことで……」
「……………」

そうなのだ。思い返せば昨日突然レノックス大佐から非番を言い渡され、明日はたっぷり寝て休もう、だなんて呑気なこと考えてたはずだ。そしてバリケードは昨夜から1日ほどかかる任務の予定があった。レノックス大佐の口からわざわざバリケードに私の非番を伝えたなんて考えにくいし、任務はどうなったかという問題もある。

「……別になんだっていいだろ理由なんか。それとも理由が無きゃ、会いに来たら悪いのか?」
「!」

バリケードは私から目線を逸らし、拗ねたように呟いた。こ、これは珍しく照れているのでは!?心なしか少し頬が赤くなってるようにも……。きゅーん、と母性本能のようなものが擽られる。しかし、その可愛さも束の間のことだった。

「……そんなことよりお前、そんなどうでもいいこと考える余裕があったとはな?」
「あ、ちょっと、それは誤解……ん!」

口付けてすぐに舌を入れられた。驚いて引っ込めた私の舌を強く吸い上げ、絡めとってゆく。貪るようなキスをしながら、もう抵抗しないと判断したのだろう、拘束していた手を解放した。そのまま手のひらを重ね合わせ、指と指とを1本ずつ確かめるように優しく絡めた後、慈しむように握り締められる。強引さと優しさの狭間で頭がおかしくなりそうだった。

息が苦しくなり限界が近づいてくると、バリケードはそれを察知したかのように、唇をゆっくりと離していく。彼と私の口の間にからつう、と延びた銀の糸が、カーテンから差し込む太陽の光に照らされきらきらと光っている。彼の親指が、離れた唇を惜しむかのように私の唇に軽く触れた。

「はぁ……バリ、ケード…」
「……やっぱこのまま食っちまうか。」

ぺろ

「!?」

バリケードが私の胸元を軽く舐めた。
炯々たる紅から、目が離せなかった。

「お前ももう、イタズラされるくらいじゃ足りないだろ?」
「っ……」

ああ、彼はずるい。
ここまでどろどろに溶かしておいて、最後は私に言わせようとするなんて。
答えなんて、とっくに分かってる癖に。
そして極めつけには、

「お前はどうしたい、名前?」

なんて、耳元で囁くのだから。







ずるいから好きです


(嘘つきで可愛くて)


(意地悪で優しいあなた)





*おまけ


「(今回の任務だり…××組織の情報収集、だっけか?軍の奴らも俺たちトランスフォーマーが虫ケラより強いことを利用して面倒臭い任務ばっか任せやがって…)」

「(そういえばアイツ、今何してっかな…)」

「…………」

「(任務の前に顔出しに行くか。)」



バンッッ

「レノックス、アイツいるか?」
「おいバリケード!ノックをしろといつも言ってるだろ!?あと乱暴にドアを開けるな!お前のせいで何回修理したと思って、」
「はいはい。で、アイツは?」
「はぁ……名前ならもう書類を済ませて部屋に帰ったぞ。」
「へぇ?いつも書類に向かってあーだこーだ言って唸ってるのにこんな早く終わるなんて珍しいな。」
「ああ、それは多分明日名前が非番になったからだろう。早めに終わらせて寝たかったんじゃないか?最近ハードなデスクワークばかりだったからな」
「……………何?」
「あ、そういえば任務に行く前に言っておきたいことがあった。まず、お前は名前に負担をかけすぎだ。朝礼に腰を抑えながら来る名前を見る度に、泣き出したり怒り狂う奴らが絶えないんだ。そして、俺としてもまだお前たちのことを認めたわけじゃない!全くとんだ悲劇だよ!!NESTのみんなにとってのかわいいかわいい愛娘がお前みたいな不良野郎に騙されるなん、」
「いいこと聞いた。thanks,お義父サン?」

バンッ

「誰がお義父さんだ!あとドアを……はぁ」



「(明日は非番、ね。)」

「(この任務の遂行時間の目安は約24時間…明日の10時頃か。とは言っても所詮虫ケラ基準の時間、俺なら速攻で終わらせれなくもない。そうすれば明日の俺の仕事も無くなる……)」

ザッ

««バリケード、気をつけてね»»
««……バリケード……すき、だよ……»»


「……はは、久しぶりに本気出すか。」






title by[初々しい恋10題](「確かに恋だった」様)

2021.1.20






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