ひょんなことからヴェルヴェットの職場を見学させてもらうことになり、Vタワーを訪れることに。ヴェルヴェットからは、受け付けに名前を言えば通してくれるようにしてある、とのことでどきどきしながら自動ドアを抜けると、突として目の前にヴォックスが現れて。
「名前! 君なら来てくれると信じていたよ! この前ウチに勧誘した件についてだろう? 立ち話もなんだ、奥で今後についてゆっくり話をしようじゃないか」
そう捲し立てながら軽く肩を抱き、ずんずんと進んでいく彼に一瞬思考が停止するも、「……す、すみませんヴォックスさん。私、今日はヴェルに用があってここに来て……」と恐れ多くも口にする。すると、ぴた、と彼の動きが止まって。上機嫌に上げられた口角がわずかにひくりと動いた気がするも、次には何事もなかったかのように笑顔を見せる彼。
「……ああ、そうだったのか。これは失敬。私としたことが、つい先走ってしまったようだ。……良ければ、彼女のところに案内しよう」
そう言って案内してくれる彼だけど、先ほどとは打って変わって終始何も発さなくなってしまったあたり、彼の心中は言うまでもない。気まずい空気になりながらも、
「……この先の扉だ」
「……すみません。わざわざありがとうございます」
「いや、気にしないでくれ。ではな」
と別れた彼背中に、罪悪感が募っていく。
……それから、時は流れて見学後。
「あー……それ面倒臭いやつかもよ? 普通に帰っていいって」
とヴェルヴェットに言われるけれど、どうしても彼のことが気がかりで、せめて一言挨拶をして帰ろうと決心をする。はぁ……とため息をつきながらも、彼の執務室まで案内してくれるヴェルヴェット。妙に緊張しながらドアをノックしようとした、刹那。
「ったく、なんなんだあの女は!」
と怒号が響くから、手が止まる。
「あの女? ヴェルのお気に入りのkittyのことか?」
「ヴェルのお気に入りだと!? 違う! 彼女は俺が先に目をつけていたんだ!」
「あれ? そうだったっけか」
「ああそうだとも! だから好待遇で勧誘してやったというのに……いつまでも返事をしない上に、今日はヴェルに用がある……だと!? ふざけるのも大概にしろってんだ!あの思わせぶりのクソビッチが!!」
……まずい、これは、非常に。
想像以上の自体に頭が真っ白になっていると、ハァ……呆れた、と呟いたヴェルが、横から入り込みドアノブに手を置く。
「えっ……!? ちょっと待って、今は……!」
だめ、と口が動くより先に、扉が開かれて。その先には、ソファーに寝そべるヴァレンティノと……ものすごい形相でデスクに拳を叩きつける彼の姿が。
「……は、名前……?」
「あ……えっと……は、はい」
「……な、なぜ君が、ここに、」
「その……そろそろ帰るのでヴォックスさんに挨拶をして帰ろうかな、と思って……」
「……まさか、今の」
「……盗み聞きするつもりは、なかったんですけど……」
「!!あ、いや待て名前、これはだな、」
「……ヴォックスさん……私……本当に、色々とすみませんでした……!」
ばたん。と閉じられたその扉の音に続くのは、ヴォックスのshutdown音、ヴァレンティノのシャッター音、ヴェルヴェットの深い溜め息。そしてこの後、ヴォックスによる必死の弁解&挽回劇が繰り広げられたとか……。