とあるエクソシストに仕事の資料を渡しに来たついでに、友人のリュートに挨拶しようと思い、彼女を探す。だいたいいつもアダム様の側にいるし、彼を見つければ会えるかな、なんて思ってきょろきょろしていると、少し先に彼の姿を発見する。
「お疲れ様です、アダム様」
彼に近づいて挨拶すると職場が違うこちらがここにいるからか、 彼は少し驚いたような顔をして。
「お、名前お前なんでこんなところに……って、あ〜……なるほどな?」
なぜかにやにやと笑う彼に首を傾げると、
「とぼけても無駄だぞ? 私にはお見通しだ!……ずばり、お前はこの私に会いに来たのだろう?」
「……え?」
「いやぁ〜お前の気持ちは何となく分かってはいたが……私も罪な男だ。なんせこうしてお前の方から来てくれることを、ずっと待っていたんだからな?」
ふふん、とキメ顔までする彼にこちらはまるで何も言えない。ここは合わせておくべきか……しかし変に嘘をついてもボロが出てしまうに違いない。
「……その、実はリュートと少し話したいなと思ってて……」
小声でそう告げれば、
「……リュート?」
「……はい」
「……」
しん、と静まり返る空気。数秒後には、彼の表情が目に見えて不機嫌になって。
「……ふーん、リュートな」
「は、はい」
「……お前っていっつもそれだよな。私が隣にいながら、リュートリュートと」
「……リュートは、親友なので……」
「んなことは分かってる。……でも、私だってお前とそれなりに話している仲だと思うんだが?なのに、こっちにはなんの用もなしってのはどうなんだよ」
腕を組み、そっぽを向き、拗ねたような表情を浮かべる彼に思わずきょとんとしてしまう。その言い方だと、まるで……。けれどその先は、何も確信がない状態で言うべきではない。
「……その、アダム様はお忙しいかなと思っていて。でも、もしアダム様がご迷惑でないなら、次からはアダム様にも話しかけに来て大丈夫ですか?」
なるべく上から目線にならないようにそう告れば、ぴん!と羽を広げる彼。次にはいつもの得意げな笑みで
「……フッ、なんだそういうことか。まあ、私は見ての通りの立場だし? 常にめちゃくちゃ忙しいが? お前なら特別に相手をしてやらんこともない!」
と言ってくるから笑みが零れてしまう。親友の上司だからと意識的に避けようとしていたけれど、こんな風に言われてしまっては、もう気にならないはずがなくて。
「じゃあ、私はそろそろ行きますね。また話しましょう、アダム様」
「おう。またな、名前」
……ああ、そういえば、直属の部下でもないのに、彼は私の名前を覚えてくれているんだなと。さっそくどきりと跳ねた胸に、この先のことが思いやられる気がした……。