なんでも、エクスターミネーションに対抗するべく、地獄で更生し、天国へ行くことを目的としたホテルがあるとのことで。地獄のプリンセスが少し前にテレビで紹介していた内容に興味を持ったものの、なかなか勇気が出なくて足を踏み出せずにいたけれど、最近なぜかペンシャスとの連絡が途絶えていることもあり、道中彼を探しがてら例のホテルに行くことに。
「ねえ、そこのキミ。初めて見る顔だけど、どちらさま?」
入口付近で躊躇っていると、突然背後から声が聞こえるから驚く。そこには、大人気ポルノスター・エンジェルダスト姿が。ハズビンホテルにはエンジェルダストが滞在している、と殿下が口にしていた噂は本当だった模様。
「あー……まさかとは思うけど、ここの入居希望者だったりする?」
そう促す彼に、少し興味があるのでお話だけでも聞いていこうかと……と零せば、驚いた表情を見せながらも中へ案内してくれて。「生憎、今はここの支配人が出かけててさ。戻ってくるまで座って待ってなよ」と椅子に座るよう促される。
最初はかなり緊張していたけれど、気さくに話しかけてくれるエンジェルダストのおかげでかなりリラックスすることが出来る。けれど、彼と談笑している内に、どうしても頭に浮かんできてしまうのはペンシャスの姿。……本当に、どこに行っちゃったんだろう。そんなことを考えていると、突として「名前……!!」とこちらを呼ぶ声がするから驚く。声の主の方を向けば、そこには音信不通だったはずのペンシャスの姿が。
「えっ、ペンシャス……!?」
「ハイ!そうです、ワタシです!」
まさかこんなところで彼に会えるだなんて思いもしなくて目を見張ってしまう。しかし、何度瞬きをしてもそこにいるのは紛れもない彼の姿で。
「ああ、名前……ワタシはとても感動しています……まさか名前がワタシを探してここまで来てくれるだなんて……!」
きゅるるん、と目を潤ませる彼に、少し言葉に詰まってしまう。確かに彼を探す目的はあったけれど、ここに来た理由は……。なんて考えていると、「……あー、感動してるところ悪いけど、この子ホテルに興味があってここに来たっぽいけど?」とエンジェルダストが口を出す。
「何を言ってるんですか!名前は私に会いに来たに決まって、」
「……」
「決まって……」
「……ごめんね、ペンシャス。私、あなたがここにいること今知ったの」
そう答えると、ぴしり、石のように体が固まってしまう彼。……これはなんだか込み入った話になる予感がしたので、少し外に出てきますね、とエンジェルダストに言い残し、彼の手を引きホテルの外へ。
「……」
「……ペンシャス?」
「……」
「ペンシャス、戻ってきて」
「!」
ハッ、と意識を取り戻した彼は、こちらの顔を見るなり慌てた表情を見せる。
「し、失礼しました!ワタシの早とちりで、名前が会いに来てくれただなんて!勘違いも甚だしい、というヤツですかね!ハハハ……ハハ……」
だんだんと尻すぼみになっていく彼の声。顔は俯き、髪はしなだれ、人差し指をちょこんと合わせる彼は、まるで、しゅん……という効果音でもつきそうな様子。そんな彼の姿に、申し訳ないな、と思うと同時にどうしようもなく愛しさが募ってしまう。
「……ペンシャス、ごめんね。確かにホテルには別の目的で来たんだけど、ここに来るまでもずっとペンシャスの姿探してたし、ペンシャスのことを忘れた日なんて一度もないよ。……改めて、無事でいてくれて本当に良かった。ずっと会いたかったよ、ペンシャス」
そう言いにこりと微笑めば、彼の尻尾がびりりと痺れ、頬に赤みが差していく。彼は再び目を潤ませながらも、
「……ありがとうございます、名前。とっても嬉しいです。……ワタシもずっと会いたかったですよ、名前」
とはにかんでくれて、胸がいっぱいになる。そのまま思わず彼に抱きつけば、「わあ!?」と彼は驚いた声を上げつつめ、それほど時間を置くことなく、こちらの背中に手を回してくれた。
「ああ〜〜なんて素敵なの!!もうそろそろ話し掛けていいかしら!?ねぇ、ヴァギー!?」
「うーん……もう少し様子見たいところだけど、このままだと私達も中に入れないからね……」
その後。買い物を終えホテルに戻ってきたチャーリーとヴァギーが彼らの様子を影から見ており、その日の内に全ホテルのメンバーにペンシャスとの会話もろもろ大暴露されてしまったとか……。