出会いがないのでマッチングアプリを始めてみた(ルシファー)







いつも通り彼の部屋でスマホを見ながらぼーっとしている時。彼に「何か面白い話題でもないのか?」なんて無茶ぶりを言われて。

「……面白い話……あ、そういえば、最近マッチングアプリっていうのを始めてみたんですよね。まだ誰とも会ってはないんですけど」

と零せば、アヒルを作っていた彼の手が止まる。そしてこちらに向けられるのは、どこか呆れたような目。

「マッチングアプリ? なんだ、そんなものを使う気なのか? 君が上手くいくわけがないだろう。なんなら賭けてもいいぞ?」

そして、極めつきにはこの言い草。なぜか確信したような物言いに、むっとしてしまう。

「もう、“君が”って強調しましたね? 私みたいな女とマッチしてくれる人はいないって言いたいんですか?」
「いや? そういうことを言ってるんじゃない。だって君、顔はなかなか悪くないだろう」
「……えっ」
「だが、絶対無理だな。100%ありえない。例え天国と地獄がひっくり返ってもだ」

そ、そこまで言う普通……!? 一瞬ときめきかけたのが馬鹿らしくなってきてさらに彼を睨み返す。

「〜〜っそんなに言うんなら! 絶対彼氏作ります! 私にここまで言ったこと、あとで後悔しても遅いんですからね!!」

そう彼に啖呵を切って、その日は城を後にする。

それからはもうアプリに入り浸る。どうせなら彼をギャフンと言わせるほどのハイスペックイケメン彼氏を作ってやる……! と心を燃やして、様々な相手とマッチする。……が。なぜか分からないけれど、長続きしない。もちろん相手に問題がある場合もあるにはあるが、なんて言うんだろう……物足りないというか。

全然紳士的じゃないし、自分本位だし、上級悪魔とすれ違ったら「ヒィ!」と情けない声出して隠れちゃうし……なんか、違うんだよな……となってしまう。理想の高い相手を求めすぎなのかな……でもルシファーさんは全部条件に当てはまってるし……あれ? そこで思考が止まる。

もしかして今まで合わないと感じてきた相手にはずっと、彼の影を重ねていたのかもしれないと。……非常に、気は進まない。けれど、これ以上はきっと何もしても無駄。大人しく彼に降ろうと覚悟を決める。



「……まぁ、結局こうなるだろうと思っていたさ」

彼の部屋に来て、開口一番にそう言われ俯く。

「ここへ戻ってきたということは、つまり私への気持ちを自覚したということかな? だから言ったんだよ。“君には” 無理だ、有り得ないと」
「……」

もはや何も言えない。彼の余裕の態度から、きっと最初から全てお見通しだったのだろう。……もういっそ殺してください……死んでるけど……。なんて項垂れていると、「……ところで」と彼の声。

「今まで一体何人に抱かれたんだ?」
「……え」

唐突なその問いに思わず顔を上げれば、にこりと微笑む彼がいて。

「今まで君が他の男を相手にしている間、私も相当キていてね。……焦らされた分、たっぷりお相手願おうか?」

そう言い、 こちらの手を取る彼だけど、 その力はあまりにも強い。そして当然、逃げられるわけがなく……。けれど、そんな強引さにどこかしっくりときてしまっている自分は、きっともう手遅れなのだろうと。大人しく全てを諦め、彼に身を委ねることとなった。





backtop