所謂、恋愛≠ニいうものには無縁の人生だった。そしてそれは、地獄に来てからも同じこと。なぜ? と問われれば興味が湧かなかった≠ニいう他ない。それ以上に、文字通り『血湧き肉躍る』刺激があったというだけのこと。……そのせいか、すぐに理解が及ばなかった。貴女が、特定の相手に恋慕の情を抱いていると。
その兆候を察してはいた。よく見ているなとは思っていたが、それだけでは説明がつかない挙動になっていると気がついたのは、いつ頃からだったろうか。他に向けるものとは、私に向けるものとは異なる、熱の孕んだ視線向ける貴女。興味本位で「そんなに彼のことがお好きで?」と尋ねてしまったあの日の自分を、呪ってやりたい。目を丸くし、頬を真っ赤にし、恥じらいながら俯く貴女を見て、私はそこで確かに、初めての感覚を味わった。ふつふつと何かが沸き上がるような、じりじりと何かが焼き焦げるような。形容し難い嫌悪感。しかし、複雑なようでいて、感情の起源自体は明白だった。
貴女をそうさせているのが自分でないことが、気に食わない
……それから貴女は、私がソレを指摘したせいか、あろう事か私を相談役にしてきた。当然不愉快極まりなかったが、なぜか断るという選択肢はなかった。私の部屋で、延々と焦がれる相手の話をする貴女は、いつでもふわふわと花でも咲きそうな雰囲気だ。そう。これが、恋をする者の顔。……ああ、良かった。ならばきっと、私のコレは恋ではない。なぜならコレは、茹だるように熱く、黒く、汚泥に塗れた醜い感情なのだから。
例えば、こんなことを思う。今ここで、貴女がヤツにして欲しいことをすべて私が奪ってやったら、貴女はどんな反応をするのだろう? 華奢な体躯をこの手に抱いて、桃色の唇に自身の唇を押し付けて、ヤツもみたことがない身体を暴いてやったら。貴女は一体、どんな顔を魅せてくれる?
……ああ、やはり貴女に向けるコレは恋などではない。そんな陳腐な言葉で片付けられる代物ではない。だって、ありえないだろう?この俺の、殺戮の愉悦をも上回るこの感情が、そんなに可愛らしいものだなんて。─────ねぇ、そうでしょう? My Dear?