あなたに別の好きな人がいる世界線での彼ら(アダム)







「アダム、私ね、ついにあの人と付き合うことになったの!」
 
 分かっていた。最初から、すべて。いつか、こんな日が来ると。
 
 でも、それでも、私は願い続けていたんだ。その、いつか訪れるその日が、どうか少しでも先であるようにと。お前の横に立っていられるこの時間が、少しでも長くあるようにと。……そんな事をしたって、何も変わりやしないというのに。お前があの男に惚れている事実も、俺とお前がただの友人≠ナ在り続ける現状も。
 
「……そうかよ。オシアワセにな、ビッチちゃん」
 
 なんて、反吐が出そうな台詞を口にしてみる。ああ、本当に反吐が出そうだ。気持ち悪ィ。さっさと別れちまえ!クソビッチ!≠キら言えない私自身が、気持ち悪くて仕方ない。
 
 お前が誰かのものになっても、世界は当たり前のように時を刻み、日々何かが変化していく。だが、きっと私は、しばらくこの場に留まったままだ。まるで、ただ一人世界に取り残されたかのように。……いつかの、あの日のように。私から離れていった二つの背中に、お前の背中が重なる。知っている。最初から、あいつらも、お前も、私のものではないのだと。では、この喪失感はなんなのだろう?
 
 気づかないフリをしても襲ってくる、どうしようもない孤独感。私は支配を求めた。しかし、拒まれた。だがら次は、望まないことにした。私なりにお前を大切にして、お前の幸せを願って……お前をただ、思い続けた。まあ、結果は今回も変わらなかったが。
 
 ……私は、どうすれば良かった? これ以上、どうすればいい? どうしたら、お前は、私を。
 
「……ねぇ、アダム。振られちゃったみたい、私」
 
 今、お前の涙を拭い、この腕に抱いたら。果たして何かが、変わるのだろうか?……いや、違う。拭えばいい。抱けばいい。好きだと、私にしておけと、離れるなと言ってやればいい。たとえ、何も変わらなかったとしても────お前に対してだけは、最後まで足掻いてみたい。去っていく背中ではなく、隣に並ぶ横顔を眺めていたい。私はもうこれ以上なにかを、お前を、諦めたくないから。
 
 
 
 
 

backtop