スパイな貴女の正体が彼にバレてしまった(オプティマス)







「……なあ。何かの冗談だよな? 君が俺達を……俺を、裏切っていたなんて」

その口ぶりに反して、彼の表情からは焦燥の色が伺える。そもそも、気を失っている間に手足を縛られ見知らぬ部屋に放り込まれている時点で、彼の言葉は愚問に他ならない。もう、こちらの正体はバレている。どう足掻いても無駄な状況に無言を貫けば、彼のフェイスパーツはじわりじわりと歪んでいって。

「っ……なんで、よりにもよって君が裏切るんだ! 俺の過去は知っているだろう!毎日どんな気持ちで俺と接していたんだ!?」

彼の慟哭が痛烈に突き刺さる。彼がかつての親友と道を違えてしまったことは聞いていた。任務のためには仕方がないとは分かっていても、辛かった。抱いてはいけない思いを胸に秘めるようになってからは、 尚更。

けれど、だからといってこちらに謝罪する資格なんてないから、結局また黙っていることしかできないのが歯痒かった。

「……どうして俺の一番大切な存在は、いつも、俺を……」

その小さな呟きに耳を疑い、聞き返そうとするけれど。彼の表情を見て、思わず言葉を失った。

「……繋がりが足りないのか?もっと君と深い関係になれば、 違えることもなくなるのか?」

暗い、昏い。美しい青を放っているはずの、彼のアイセンサー。ぞくり。初めて彼に対して抱いた嫌悪感に、目を逸らす。

「……私を、追放しないの?」

かろうじて口をついて出たのは、そんな言葉。得体の知れない恐怖が湧き上がってきたのだ。この異様な状況に、目の前の彼自身に。早くこの場から逃げたい、楽になりたい。それがきっと本音だった。

「……“オプティマス・プライム” としての解答は、君を追放することなんだろう。だが、困ったことに “俺” は……到底それを受け入れられそうにないらしい」
「……え、」

刹那。ゆっくりと、彼の体躯が近づいてきて。包まれる感覚、忙しなく鳴る駆動音に、彼から抱き寄せられたのだと、遅れて理解した。

「……君の心が変わるまで、俺はずっと待ち続ける。君を愛して、愛して、愛し続けて、強く深く繋がり合えば……きっと同じ道を歩んでいけるはずなんだ」

───俺はもう二度と、 喪ったりしない。

聴覚パーツに注がれるその声は、まるで自身に言い聞かせているよう。直接的な言葉であるはずなのに、まるで底が見えなくて。僅かな隙間からおそるおそる顔を見上げれば、焦点の合っていない彼のオプティックが、ゆらりと揺れていた。





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