スパイな貴女の正体が彼にバレてしまった(センチネル)







想定外だった。正体がバレたら、尋問か拷問を受け、情報を吐くだけ吐かされた後、すぐにスクラップにされると思っていたから。まさか逐一、彼の元へ連れられることになろうとは。手足を拘束し、壁に磔にしたこちらを、彼は得意げに見つめる。

「まずは今日のこの時まで君の正体を私に悟らせなかったことを褒めてやろうか。よもやこのサイバトロン星の最高権力者の情報を探ろうとは……よほど強いスパークを持っていると見える」

わざとらしく、分かりやすい皮肉から、彼の断罪は始まった。彼の本性を知るこちらとしては、彼の態度に苛立ちと悔しさが湧き上がって仕方がなかった。

「……慈悲深い私が特別に選択肢をやろう。今すぐに頭を垂れ惨めたらしく助けを乞い、私に忠誠を誓うか。それとも、私に永遠に囚われ、己の愚行を悔いながら、その身が果てるまで私の“都合のいい存在”になるか」

にやりと嗤う彼を、鋭く睨みつける。馬鹿らしくて仕方がなかった。彼の選択肢は、あってないようなもの。結局のところ、前者も後者も結果として同じなのだ。

「……殺して」

第三の選択肢を出せば、彼はきょとんと目を丸くした後、高らかに笑い始めた。

「はは!ここに来て君のブレインは著しく低劣になってしまったようだな。殺す?君を?まさか!……そんな赦しを与えるわけがないだろう?」
「……なら、どうするつもり?」
「……ときに君は、“美しい機体” だと誰かに言われたことはないか?」
「……え、」

緩やかに細められる彼のオプティック。ぞくり。一瞬で温度の変わったそれに、スパークが跳ねた。舐めるように下から上へと注がれる視線に、ブレインが警鐘を鳴らす。想像もしたくないけれど、彼の言わんとしていることは、きっと。

「大人しくさえしていれば、存分に可愛がってやるさ。私は君が思う以上に、君を気に入っているからな」

彼に抱き寄せられる。彼の手が腰に回る。

「っ……裏切り者を生かして、こんなことをするなんて、許されない!」
「一体誰が? この星に私に逆らえる者はいない」
「本当に最低!変態!!」
「威勢がいいな?躾甲斐がありそうだ」

彼と機体が密着する。顎に手を添えられる。けれど、体はぴくりとも動いてくれない。

「ご主人様からの最初の命令だ。……絶対に、舌を噛むなよ?」

───そうしたら。あとはゆっくりと、 彼に堕ちていくだけ。





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