程普殿に恋心を寄せるも何かと子供扱いされて全く相手にされなくてメソメソしてる名前。私には大人の色気と経験が足りないんだ……!と思ってそこら辺の男と事に及ぼうと街へ繰り出す。そして偶然飲みの帰りで街にいた程普殿、知らない男と一緒にいる名前の姿を捉えて見開くが、それも一瞬。
(……やっと目を覚ましおったか。若輩は若輩同士で結ばれるが良い。)
そう思い目を逸らそうとするも、男女が向かう先に違和感を覚える。(宿屋?……まさか。) 俯く名前の表情は読めない。(……いや、既に良い仲なのかもしれない。) しかし思いとは裏腹に足が止まり、聞き耳を立ててしまう程普殿。
「それにしても初めてなのに誘ってくるなんて、君は積極的な子だなあ。表情を見るに失恋か何かだったりする? 大丈夫だよ、これから俺がたっぷり慰めてあげるから」
一方、男の声に何も言えない名前。……ああ。これから、知らない男に体を明け渡すんだ。はじめては程普殿が良かったけど……仕方ないよね。震える体を押し込めて宿屋の暖簾を潜ろうとした、その時。
「……おぬし、一体何をしておる」
求めてやまない声がした。
その後、無事名前をを回収する程普殿。事の次第を聞き、「この馬鹿者が!」と激怒。これには名前も「程普殿こそ引き止めるなんて期待させることしないで下さい!どうせ私相手じゃそういう気も起きないくせに!」って逆ギレしたら、突としてとんでもなく深い口付けをされる。やがてゆっくりと離れていく唇。状況を理解できず、ぼうとした頭で彼を見れば、
「……何を言う。おぬしの前では吾輩も欲に滾るただの男よ。決めつけるでない」
ぐらぐらと煮え立つような瞳に胸が熱くなる。でも、じゃあなんで今まで……と疑問を隠さずにいると。
「……吾輩はどう足掻いてもおぬしよりも先に世を絶つ。ならば若輩同士で結ばれた方が良いと考えていた。……だが、おぬしが他の男と契るのかと思うと我慢ならなくなった。己が招いた結果である事は承知の上で、おぬしが吾輩以外の者の手に抱かれることが惜しくなってしまった。……困ったものよ。ここに来て己の未熟さを再確認させられることになるとは」
……それはつまり。都合よく解釈しても、いいのだろうか?期待に逸る鼓動を抑えつつ、口を開く。
「程普殿。私には貴方しかいないんです。ずっとあなたしか見えていません。だから……どうか、私を選んでくれませんか?」
「……一つだけ言っておこう。逃れるのなら、今のうちだ。この先は、手放すことは適わぬ」
「ありえません。ずっと、手放さないでください」
「……名前、」
珍しく紡がれたこちらの名前。耳元に寄せられた口からは、きっとこちらをを喜ばせる言葉が降りかかることだろう。
「───吾輩は、お主を愛してしまった。もう遠慮はせぬ。覚悟することだ」