「てめぇ……よくもこのスタースクリーム様を騙しやがったな!相手がお前じゃなかったら1秒も待たずに塵にしてやってるところだぞ!」
こちらを憎々しげに睨みながら、銃を突きつけるのは、敵地で愛してしまった同僚。彼にだけはバレたくないと思っていたはずなのに、いざこうなると、むしろ逆のことを考えていた。
「なら、早く殺して」
「は? てめぇ、なにを……」
「例えスタースクリームが殺さなかったとしても、結果は同じだと思うから……それなら、私は貴方の手がいい」
「っ……!」
せめて最期は好きなひとの手で、なんて。スパイという辛い仕事を続けたご褒美として、これくらい願うことを許して欲しい。動揺が隠せていない彼の腕が、震えている。だから念を押すように、口にした。
「……お願い、スタースクリーム。こんな立場で言うのも烏滸がましいけど、これが最初で最期のお願いだから」
絞り出すように発声したのにも関わず、尚も彼は揺れている。むしろ、彼のフェイスパーツはぐにゃりと歪んでいた。
「……なんで、こんな馬鹿な真似しやがった」
「……ごめんね」
「っ……謝るんじゃねぇよ!くそ!!」
彼が再び銃を構えた。エネルギーが集まっている。きっと、その気になればすぐに彼お得意のナルビームが放たれることだろう。荒く排気する彼の姿を最期に、覚悟を決めて視界を閉じていく。しかし、待てど待てど、そのときは訪れない。
「……やめだ」
感知したその声に驚き、彼の方を見上げる。
「俺は絶対にお前を許さない。この恨みは、簡単に殺して楽にさせるだけじゃ、到底収まらねぇよ」
「……なら、私は」
どうすればいい?迷子のような心持ちで彼に問えば、彼はこちらに繋がれた首輪の鎖を手に取る。
「……生きて償いやがれ。今日からお前は俺様の物になるんだ。俺のためだけに生き、俺と同じ日に果てろ。“サイバトロニアン” としてじゃなく、俺の“所有物”として生きれば、ただ喋るだけの金属の塊だ。他の奴らも、それなら文句は言えねぇだろ」
許さない、恨むなどと言っておいて。彼はその言葉に隠しきれていない優しさに、気づいていないのだろうか。否、彼にとってはきっとこの提案は報復でしかないのかもしれない。でも、こちらにとってそれは、まるで都合のいい夢のようなもので。少しも罰になんかなっていない。
彼はこちらの心情など知らぬまま、まるで自分がとても酷いことをしているかのように嘲りながら、こちらを抱き寄せて。その手をこちらのトランスフォームコグへと伸ばしていった。
「───これで今日からお前は、俺の為だけに生きるロボットだ。ははっ、どんな気分だよ? ざまあみやがれ」
……喜んでいい、はずなのに。彼にこんな表情をさせてしまっていることだけが、唯一の心残りだった。