失恋した女の子に思いを告げる(爆豪)





「オイ、開けろ」

彼氏に振られたという噂を聞きつけて部屋まで駆けつけてくれた彼。だけど、今の顔は涙でぐしゃぐしゃ。そんな顔で誰かに会うこともできないので、つい黙り込んでしまう。
しばらく経って、帰ったかな?と思っていると、

「……話聞いてやっから」

普段の彼からは想像も出来ないほど優しさのこもった声が。いつも「すぐ別れんンだろ」「アイツはやめとけ」 なんて馬鹿にしてきた彼がそんなことを言うのが意外で、思わずドアを開けてみる。彼のために座布団を1つ出して自分の横に置き、再びクッションに顔を埋めて蹲ると、彼は大人しくそこに座った。

話を聞くと言ってくれたけど、あまり暗い雰囲気にしたくなくて、「爆豪くんの言う通りになったね、振られちゃった」と努めて笑いながら話してみる。しかし、彼にとってそれは逆効果だったようで。聡い彼はこちらの意図を汲むと、ぐっと唇を引き結ぶ。そして次には抱き寄せられて。

「無理して笑うんじゃねぇよクソが」

彼の優しさに思わず涙が滲むけど、必死に堪える。だけどそれに続けて、

「…ンな顔するくらいなら最初から俺にしとけや」

…なんて、彼とは思えないほど細々とした声で伝えられるもんだからついに涙が溢れてしまう。
それから泣き喚くこちらの傍に何時間も付き添ってくれる彼。いくらか落ち着いた後、彼の思いに応える旨を伝えてみる。すると、

「あいつなんか俺が秒で忘れさせたるわ」

いつもの彼らしい自信満々な声で言われて、思わず笑ってしまう。こちらの心からの笑顔を見て、彼は一瞬驚いた表情をするけど、次には目を細めて愛おしそうに見つめながら、

「お前は俺の隣でいつもそうやって笑ってりゃいいんだよ」

と言って宝物に触れるように優しく頭を撫でた。




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