「は……?」
驚きすぎて思わず目が点になる彼。でも数秒後にはみるみるうちに眉間に皺が寄り、引き攣った表情を浮かべて。
「てめぇ…それ本気で言っとんのか」
怒っているようにも見えるけれど、どこか“信じたくねぇ”というニュアンスが感じられる。
「う、うん…普通に気になるし…?」
恐る恐る答えれば、はぁーー、と大きなため息。そのままくしゃりと髪をかき上げると、その場にしゃがみこむ。そして脱力した声で「…いる」と一言。
「え、いるんだ!ちなみにどんな人?」
そう尋ねると、再びため息をつき、今度は頭を抱えて下を向いてしまう。彼の行動に対して頭に疑問符を浮かべていると俯いていた彼がふと顔を上げ、心底恨めしそうな顔でこちらを見つめながら、口を開く。
「あからさまな態度にも気づかねぇで、能天気に好きな相手いるか聞いてくるヤツ」
そんなことを言われてしまったら、答えはひとつしかなくて。熱くなってゆく頬と高鳴る鼓動を感じながら、今にも叫び出しそうな口元を抑える。こちらの様子を確認すると、なんだか少し満足気にも見える彼が「はよ気づけや、このクソ鈍感女」と照れ隠しのように呟いて、呆れたように笑った。