元彼から電話がかかってきたときの彼の反応(爆豪勝己)





「…げ」

彼とのデート中。テラス席で新作のフラペチーノを飲んでいたら元彼の番号から着信が来て、思わず顔が引き攣る。

「ンだその反応。元彼か何かかよ」
「え、なんで分かったの?」

ズゴッ、と。思い切りそれを吸い込み、 その勢いで噎せる彼。どうやら先程のは冗談で言ったつもりだったようで、返した言葉は彼を驚かせる結果となったらしい。大丈夫?と彼の背中をさする最中も、依然着信音は鳴ったまま。切ってしまおうかと携帯に手を伸ばした、そのとき。伸ばしかけた方の手首を彼に握られて、動きを止められる。

「…よく連絡寄越して来んのか、そいつ」
「うーん…別れて以来初めて、かな…」

そう答えると彼は私の手首を掴んだまま、反対の手で携帯を持ち、 通話ボタンをタップした。

『…久しぶり』もう一生聞くこともないと思っていたその声。苦い思い出が蘇り、肌が粟立つ。こちらが何も発さないでいると、元彼はそのまま謝罪と共にもう一度やり直したい旨を語り出す。

『浮気なんてもう絶対しないから!』

そう放たれると、彼は視線をこちらに向ける。(…だってよ。どーすんだ)そんな感じの表情で。
無言の彼に合わせてこちらも声を出さず、全力で顔を横に振ると、よし、といった風に小さく頷いて、彼は口を開く。

「オイ浮気野郎。一度しか言わねぇ。俺はこいつを手放す気ねーし、こいつはテメェと寄り戻す気なんざこれっぽっちもねーからとっとと諦めろ。 次こいつに連絡してきたらコロス」

そしてこちらが何かを口にする間もなくブツリと通話を切られる。「…えっと、ありがとう勝己」 正直話したくなかったので対処してくれた彼に感謝を述べる。

「…絶対ェ他のヤツにはやンねぇかんな」
「…?」
「あと浮気はクソだ。俺は死んでもする気ねぇよ」

まさか彼がするとは思っていないけれど、今の状況でのその言葉はじんわりと胸に溶け込んで。すこし涙ぐみながら微笑みかければ、彼は滅多に見せない優しい笑みを浮かべて、さらりと柔く頭を撫でてくれた。




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