彼の家で会話に花を咲かせていると、元彼の番号からの着信が。画面を見たまま固まるこちらに彼は疑問を抱くけれど、強ばった顔を見ると何かを察知。
「…それ、誰からなんだ?」
「……元、彼です」
瞬間、彼の顔は険しいものに豹変する。正直無視したい気持ちもあるけれど、出なかったら出なかったで何かやましいことがあると勘違いされそうだから悩んでしまう。悶々としていると、彼がものすごく不満そうな顔をしつつも、「……出ねぇのか?」 と促してくるから、苦笑する。
何の用だか知らないけれど、早いとこ切り上げて彼を安心させようと思いながら通話ボタンを押し携帯を耳に当てると、彼が耳を当てている側の真横に移動してくる。そして、ぴとり、と。自身の耳を携帯にくっつけてきて。どうやらこちらの会話を聞く気満々のよう。え、なにそれ可愛い。髪の毛からいい匂いするし、顔近い。色々とドキドキしながら、ちらりと彼の顔に視線を向けると、もの凄く険しい顔してるから吹き出しそうになる。 そう、例えるなら、犯人を追う刑事のような。…と、今までノイズしか聞こえていなかった携帯から、やっと声が聞こえてきて。
軽い挨拶を交わした後『…俺たち、やり直さないか』と聞こえてきて、彼が眉を顰める。あ、これ絶対何か言うつもりだなと分かったので反対の手で彼の口を塞ぐと、きょとんとした顔をし、また拗ねた顔に。
「もう大好きな恋人がいるから無理です。やり直す気ないからもう二度と連絡して来ないでね」
ぷつ。そのまま通話を切り彼の口元を解放すると、“一件落着”の意味を込めて、ピースをし、笑ってみせる。するとコンマ1秒も経たずして彼に抱き寄せられて。
「…それはずりぃだろ」
と少し赤みを差した顔の彼。今日はいつにも増して可愛いなと思いながら髪を撫でれば、体を少し離し、額が着くほど顔を近づけられて。
「もっと好きになっちまった。…責任、取ってくれるか」
……そうやって、可愛い所を見せたかと思えば、しっかり男の顔してくる彼こそが、本当にずるいひとだろう。彼の問いに肯定すれば、その場ですぐに責任を取らされてしまった。