彼と2人きりの時間を過ごしていたら、元彼の番号から通話がきて気分はがた落ち。こちらの感情の起伏には聡い彼だから、その様子にはすぐに気づかれてしまって。
「…どうしたの?困った相手からの電話だった?」
優しく声をかけてくれる彼にいつも泣きたくなる。
「その…相手が、元彼で」
「え、」
そしてお互いに何も喋れなくなってしまう。微妙な空気に反して鳴り響く陽気な着信音がなんだか恨めしい。どうしようかと戸惑っていれば、「えっと…俺がいると気まずいなら、席を外そうか?」と彼の声。
そう口では言っている彼だけどどこかそわそわした様子が伺えるから、きっと本心では気になるのだろう。彼の気遣いに内心微笑みながら、「大丈夫。何も後ろめたい事ないからむしろ聞いててほしい」 と言えば僅かに目を開いた後、「…うん、わかったよ」と返される。
…まぁ、結果から言えばその電話はこちらとの復縁を求める内容で。
「そういう気一切ないから」 『反省してるんだよ、』同じやり取りが続き、話は平行線。もう切ってしまおうか、と思ったとき、遂に元彼の方は我慢の限界を迎えたようで。
『…ッとに変わんねぇな。どうせ誰と付き合っても上手くいかねーよ、お前みたいな奴は』
今まで何を言われても傷つかなかったのに、ここに来て言葉に詰まってしまう。もしかして相手から見ると、私は結構面倒臭い性格なのかな。今目の前にいる彼にもそのように思われたら……。そう思うと辛くて、瞳が熱くなる。すると、今まで黙っていた彼が携帯を持つ手に自らの手を重ねて。
「…ちょっと貸して」
いつも優しい彼の眼差しには、どこか怒りを滲ませているから、少しどきりとする。そういえば、相手もずっと怒鳴るように話してたし、内容聞こえてたのかな。そんなことを考えながら無言で携帯を差し出せば、彼はこちらの代わりに話し出す。
「…もうこれ以上、彼女に関わるのはやめてもらえませんか」
『…は?』
「やり直したい相手に対して泣かせるような言葉を使うのは、どうかと思いますよ」
『…誰だか知んねぇが、部外者は割り込んで、』「部外者じゃない、俺は彼女の恋人だ」
『っ、』
「貴方みたいな人とは、 例え彼女が願っても、二度と話させません」
『っおい、』
「彼女を貶める前に、もう一度自分という人間を見直してください」
…怒涛の時間だった。普段温和な彼が自分のためにここまで怒りを露わにしてくれていると思うと、胸が高鳴ってしまう。
「…ごめん!好き勝手に言ってしまって…」
しゅん、としながらこちらの様子を伺う彼を見て思わず微笑みながら、“このひとに出会えて本当に良かった”と心から思った。