彼に後ろ抱きされながらソファで話していると電話がかかってきた。彼との時間を優先したいからとりあえず放っておこうかと思うけど「出ないの?」と彼が訊ねてくるので、ありがとう、と答えてスマホを取り出す。
だけど表示されていたのは元彼の番号。出る気は無いし、出るとしても彼の前では絶対に出られない。動揺していると、「…俺の前では出られない相手?」と声を低くし、抱きしめる腕を強めてきて。浮気を疑われたくないから仕方なく相手を打ち明ければ、勝手に応答ボタンとスピーカーボタンを押される。ちょっと、と抗議する間もなく元彼からの通話が始まって。
『…俺にはやっぱお前しかいないんだよ。もう二度と浮気なんてしないから、やり直そう』
それにすぐさま、もう彼氏いるし貴方とも一生会わない、と答える。すると『お前だって結局俺しかいないんだよ!それに俺の方がお前のことわかってるし愛してる』なんて言ってきたのでブチ切れ寸前。どんな罵詈雑言をぶつけてやろうかと考えていると、彼が小声で「ちょっとうるさくなる」と一言。なんの事だろう?と疑問に思っていると、彼が携帯に少し口に寄せて。
「…さっきから黙って聞いてりゃ随分勝手なこと言いやがって…お前そろそろいい加減にしろよ」
と、怒りを孕んだ声。元彼は『誰だ!』なんて喚いてる。
「俺の方がこいつのこと分かってるし、俺の方が愛してる。浮気とか普通に論外だろ。死にたくなかったら二度と関わんな」
そしてブツ、と通話が切れる。彼の言葉に惚けていれば「また接触してきたら言え」と首を掻く彼。…長生きしたいなら私から離れろよ元彼、と思いながらこくりと頷く。
「はぁ…アイツもお前の色んな顔知ってるんだって思うだけでおかしくなりそう」
独り言のように呟き、苛立つ彼。嫉妬を滲ませる彼の愛しい唇にそっと口付けて「こういう顔は弔くんの前だけだよ?」とはにかめば「…言ったな?」意地悪そうな顔をした彼と再び唇が重なった。