「おにーさん、良かったら遊びませんか?」
「…お前誰だ?」
まさか人生初逆ナンにして相手からの第一声が、“お前誰だ”だとは予想してなかったから内心めちゃくちゃテンパる。
「…えーと」
「わりぃが俺はお前の兄さんじゃねぇぞ。人違いじゃねぇか?」
「……」
顔が引き攣って仕方ない。なに、なんなの、この無駄に顔がいい天然記念物は。
「…あは、そうですね、人違いだったみたいです」
「そうか。無事兄さんに会えるといいな」
最後の声は聞こえなかったことにして、さっさと撤退。これは私の人選ミスだっただけだ…と思いつつ、同じ方法で別の人に声をかけたら今回は無事成功する。そうそうこういう展開求めてたの、と思っていると気づけば流れでラブホの前まで来ていて。覚悟を決めて促されるままに入ろうとする。───と、突然背後から肩掴まれる。驚いて振り向けば、そこには先ほどの紅白頭の天然記念物さんがいて。
「…お前、兄さん探してたんじゃなかったのか?それに、ここがどういう場所か分かってんのか?」
なんだかすごい怖い顔してるし、息も荒いしで困惑する。
「…すみません。元々兄は探してませんし、あなたにも最初からそういう気で話しかけました。“お兄さん”って実の兄じゃなくても言うでしょう?」
説明すると少し納得したような顔をした彼だけど、依然としてその表情は険しいままで。2回目に声をかけた男も機嫌が悪くなってきていて軽く修羅場になっていると、
「…あんた、悪ぃがこいつは先に俺を誘ったんだ。譲ってくれねぇか?」
と彼が言い放つ。男はそれを聞いて最初は渋っていたけれど彼の剣幕に怯んだのか、静かに去っていった。
「…どうして」
ここにいるのか。そこまで怒るのか。邪魔をしたのか。様々な疑問を抱いていると、「お前、様子がおかしかったからな。怪しいと思って悪ぃが尾行させてもらった。…けど、まさかこういう展開になるとは思わなかったけどな」 なんて言ってきて。
「じゃあなんで止めたんですか」
「…俺にはどうしても、お前が望んでああいうことしようとしてるようには見えなかった」
そんなことない、そう口にしたいのに、見透かされたような瞳に何も言えなくなってしまう。
「…轟焦凍だ。お前は?」
言い淀んでいると彼は唐突に名乗ってきて。独特な空気感にやはり彼は天然なのかな、と思いくすりと笑えば、ころん、ころん、と。新たな2つ恋が落ちる音がした。