「あーあ曇っちゃったな」
「夜は雨も降るらしいね」
彼との学校から寮までの帰り道、空模様を伺いながら話す。
「万葉集にね『この夕へ降りゆく雨は彦星の早漕ぐ船の櫂の散りかも』っていう歌があるの 」
「突然だね」
「まぁまぁ聞いてよ。これは七夕の歌で、『この夕べに降る雨は彦星が急いで漕いでいる舟の櫂の雫なのかも』っていう意味 」
「じゃあ、七夕の雨は川の水しぶきなのかもしれないって一個人が想像した歌ってこと?」
「そうそう!言い伝えとかそういうのもあるけど、自分で想像してるのが面白くなって」
「なるほどね 」
「そこでさ、心操くんはどう思う?七夕の雨 」 「俺?」
彼が顎に手を当てそうだな…といいながら考える。
「…俺だったら、2人きりの再会を誰かに見られたくないから雲で覆い隠してるのかなって思うよ。好きな人の可愛いところを大勢に見せびらかすなんて趣味ないし」
意外と独占欲が高い考え方に驚く。意味もなくにやけていると、ふと彼が立ち止まって。様子を伺おうと顔を覗くけば、不意打ちに口付けられる。突とした行動に、思わず頬を染めてしまう。
「こういう…とことか、さ」
彼は照れながらボソッと呟いた。