記憶喪失になった上鳴くん





彼女の事を忘れちゃった上鳴くん。付き合ってた事も忘れてるので、他の女の子達とも普通に仲良くしちゃったりする。数ヶ月経っても状況は変わらず、落ち込むの女の子の話を切島くんが聞いている。すると、たまたまその場を見てしまった彼は無意識に駆け出して2人の間に入り込み、女の子を連れ出して。切島くんが呼び止める声も無視し、彼は突き進んでいく。人気のない所まで来た時点で女の子が呼び掛けると、ハッとする彼。

「…ごめん。自分でも何でこんなことしてんのかわかんねー…けど、キミが他の男と仲良くしてるとこ見んの…なんかしんどくて」

何でだろうな、ほんと。そう呟く彼の声は震えていて。女の子は思わず涙を浮かべて、彼を抱きしめる。そして再確認する。やっぱり、彼は彼だ。自分が愛した彼は、世界でたった一人。このひとだけなんだ、と。

「だいすき、電気くん」

優しく囁く女の子の声。すると、彼の瞳からぽろぽろと雫が流れ落ちる。

「…名前ちゃん?」

その瞬間、色褪せたはずの彼の思い出が、徐々に彩りを取り戻していった。

初めて君と話した日、 君に思いを告げた日、両思いになった日、初めて唇を重ねた日、初めて君の肌に触れた日。
なんで忘れていたんだろう。何よりも美しくて、大切で、愛しい記憶。

「う、そ…でん、」 その先の言葉は、彼の口で塞がれる。今までで一番余裕が無くて、胸が苦しくて、どこか乱暴で、少し塩辛いキス。でもそれは、どうしようもなく女の子の心を幸福感で満たしていった。

「もう絶っ対忘れないから…ごめんな…」

宝物に触れるように優しく抱き寄せる彼。あたたかで大好きなこの温もりを絶対に離すまいと、柔らかに微笑みながら背中に手を回した。




(TLで相互さんが「記憶喪失になった電気くんが見たい」とつぶやいていたので即席で作ったお話。その相互さんにしか見せてなかったのでこちらで供養します。)


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