ヴィランに助けられたことを機にホークスが気になり始めて、街で出会う度に挨拶したり雑談したりしている内に本格的に好きになってしまった女の子。でも相手はNO.2の大人気プロヒーロー。きっと引く手数多で、自分以外に好意を向ける相手は後を絶たないだろうと考える。彼が助けた数ある一般人の内の一人にはなりたくない、と思いアプローチ開始。
「…ありがとうございます、嬉しいなぁ。これからも応援よろしくお願いしますね 」
なんて、最初は定型文のような対応。けれど女の子が絶えず告白し続けていると、ある日人気のないところへ連れられる。彼はいつものような営業スマイルもなく、酷く真剣な表情で。
「貴女が本気で俺を好きになってくれたのは分かりました。…でも、すみません。俺はこういう立場ですし、貴女が満足するような関係にはきっとなれない」
だから俺なんかやめて新しい人と幸せになってくださいね。そう言うと、頭にポンと手を乗せてくる。別の人を宛てがうような言葉が辛い。呼び出された時点で振られるのが分かってたから、彼がどんな表情でそれを口にしているかすら確認することができなかった。望みが薄いのは鼻から分かっていたことだったけど、ついにバッサリ切り捨てられて、もう二度と好きだと伝えることが出来ないとわかり落ち込んでしまう。幾分か冷静になってから、あのセリフを彼は今まで何度口にしたのだろうと考えると更に惨めになってくる。諦めなきゃ、と思えば思うほど想いが募っていくようでどうしようもない…。
失恋から数週間後のある日、いつまで経っても彼が忘れられないのでヤケになり、手っ取り早く彼を忘れるために夜の相手を探すことに。少し歩いていると、男に声をかけられたのでそのままホテルに向かう。ホテルの入口が目と鼻の先に迫った、その時。どこからともなく一枚の赤い羽根が勢いよく飛んできて、女の子の服をすくいあげると、そのまま風のような速さで飛ばされる。たどり着いた場所には、彼が立っていた。
「ねぇ。あのまま、あの男と、あんな場所で、一体なにをするつもりだったんです?」
酷く怒りを滲ませた声色に思わず体が強ばる。
「俺は貴女を大切に思うからこそ遠ざけたんです。俺のそばにいたら普通の幸せは望めないから。ヒーローにあるまじき考えだと承知の上で、貴女には他の誰よりも幸せになって欲しいと願っていた…それなのに、どうしてあんな下半身に脳みそが詰まってるような下衆な奴と一緒にいるんですか」
貴女の体はそんなに安いもんじゃないでしょう。ふわり頭を撫でられる。怒っているはずの彼だが、その手つきはとても優しくて。じわりと滲む涙を堪えて、貴方を忘れるためですよ、と呟く。諦めが悪く、面倒臭い女だと分かっていたけれど、忘れられなかったのだから仕方ない。彼はそれを聞くと目を丸くして、次には微笑する。
「…わかりました、俺の負けです。さすがにあんな奴にいとも容易く貴女を暴かれるのは耐え難い。…この先何があっても後で後悔するな、とは言いません。今も尚、俺を選んでくれるというなら、俺の全力を持って貴女を幸せにします」
そう言ってくれた彼に、今度はこちらが目を丸くする番で。彼を信じられないようなものを見る目で見つめていたら、
「……俺は何とも思ってない女性に対して、偶然装って何度も話しかけに行くほど暇じゃないですよ」
なんて言葉が返ってきたから、卒倒するしかなかった……。