七夕記念(天喰)





「雨降ってるね」

彼と2人、談話室の窓から空を眺める。
「…君は何だか少し悲しそうだね 」
「今日は七夕でしょ?織姫と彦星は泣いてるのかなぁと 」
「泣いてる?」
彼が不思議そうな顔をする。
「うん。環くん、催涙雨って知ってる?七夕の日に降る雨は、織姫と彦星が年に1度しか会えないことを嘆いた涙だっていう話」
「そうなんだ…知らなかったな」
「私の地元ではそう教わったんだ。それでもし環くんと1年に1度しか会えなかったら…私も悲しくても泣いちゃうだろうなって考えてた」
そこまで言うと頬ずえをついて雨音を聞く。ぱらぱら。この音が何故か無性に悲しく響いていた。
「俺なら……」
彼の声がしたので耳を傾ける。
「…俺なら、1年にたった1度しか君に逢えないのに、それを嘆いて涙するなんて少し勿体ない気がする。俺は数少ない逢瀬で君の笑顔をたくさん見たいし、流すなら嬉し涙がいい」彼の意見にハッとする。彼はいつも自分には想像もつかないような新しい見方をする。そんなところを尊敬していて、また好きでもある。
「すごく素敵な考え方…ありがとう。今年からは笑顔で七夕の雨を見届けそう」
そう言って微笑みかけると彼はそれを見つめて、

「俺は大したことしてないけど…君を笑わせることが出来たなら、嬉しいよ」

と言い、目を細めた。




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