オタク女子と恋人の彼(弔)





変な趣味だなとは思ってるけど特に気にしてない。彼の場合、女の子自体に興味あっても、女の子の趣味に関しては別ものなので、さして興味を示さない。へぇ、という感じ。寛大といえば寛大だけど、女の子的にはやっぱり私のことそんなに興味無いのかな?なんて考えたりしてしまう。
彼に嫉妬させようとするため、「はぁぁ…ほんと高杉〇助最高…かっこいい…」 と彼の前で呟いてみる。……。まさかの完全スルーに驚きチラリと彼を見れば、彼もこちらを見つめ返してくる。
「…な、何か言いたいことある?」
恐る恐る聞くと、
「…紙の上の男ばかり褒めるなんて、妬けちまうな?」
言っていることと裏腹に、その顔に全く嫉妬してい様子はない。むしろ、『これが聞きたかったんだろ?』とでも言うような得意げな表情だ。さすがに言わせた感半端なくて、逆にこちらが恥ずかしくなる。失敗。
やることはしっかりやってるけど、ときめき不足で少し寂しい女の子。それを埋めるために少女漫画に没頭すれば、胸きゅん炸裂でのめり込む。「これがあれば現実のときめきはいらないかもなぁ」なんて独り言ちてベッドに座って漫画を読んでいると、誰かによって上からそれを取り上げられてしまう。
「あ、…いいとこだったのに」
取り上げた漫画を片手に、真顔でこちらを見下ろしてくる彼をムッとした顔で咎める。
「……」
相変わらず無言、無表情の彼。でも、その顔は何だか少し不機嫌そうに見えて。ポイッと漫画を投げてしまった彼に、「ちょっと!」 と声を上げれば彼の手が不意に頬を撫でてくる。その手つきは、普段の彼からは想像もできないほど酷く優しいものだから動揺するしかない。こちらを見つめる感情の読めない青い瞳が、女の子を射止めて離さない。彼らしくない行動の数々にドキドキと高鳴る胸が止まらなってしまう。

「え、と…荼毘?どうかした?」「…………」
「な、何か言ってよ…ねぇ…」「…………」
「ちょっといい加減に…っん!?」

突如、口付けられる唇。でも、そのキスもいつものような深いものではなく、ほんの少し触れるだけの軽いキス。
いじらしくて、少し物足りないようなそれは、なぜだか深いキスよりも女の子の羞恥を煽っていく。彼の真意が読めなくて、真っ赤な顔で見つめると、真顔だった荼毘が、いつものしたり顔に変わる。

「で?トキメキってヤツはこれで足りたかよ?」

…これにはさすがに女の子も完敗。「…マダタリマセン」と悔しげに呟けば、格別に甘い時が流れていく…。その後も女の子がときめき不足になるときに限って、とろけるような甘いアメを与えてくる。飴と鞭を熟知した策士な彼だけど、彼といれば二次元に入れ込み過ぎずに済むのかも?




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