注射の副作用に苦しむ女の子と彼(天喰)





「無理しないで。何もしなくても大丈夫だよ」

それが口癖。何もかもせっせとやってくれる彼に申し訳なさを感じて、ちょっとだけ布団を抜け出して洗濯物たたもうとすると、すぐさま駆け寄ってきて、再び布団の中へ連行される。

「…こら。無理しないでって言っただろ?」

少し怒った口調で咎められるけど、優しさが滲み出てて全く怖くない。だけど、彼を思ってやったのにな、と寂しく思ってしまう女の子。すると、不意に頭を柔く撫でられる。

「君が俺を思って動いてくれたのは分かってるよ。…君は本当に優しいね。俺には勿体ないくらいだ」

愛おしそうに見つめて目を細める彼。その言葉を、そっくりそのまま返してあげたいとしみじみ思う。うまく言いくるめられた感は否めないけど、渋々横になれば、彼は満足そうにニコリと笑った。一通り家事を終えると、女の子の布団の脇に座ってくれる。

「何か作ろうか。食べたいものはある?」
「ごめんね…今は食欲ないかな」
「気にしないで。…今、どんな風に辛い?」
「頭が痛くて…あと倦怠感?がすごいかな」
「薬は飲んだ?」
「うん、飲んだよ」
「そうか…」

思いやりの一言一言がじんわりと胸に染みる。彼の行動から、言葉から、表情から、本当に心配してくれているんだな、と分かるから愛しさが込み上げて止まらない。

「…君の苦しみを俺に分けられたらいいのにな」

ふと、そんな事を呟く彼。

「君は優しいから、俺が肩代わりしたいと言ったら怒るだろ?だから、2人で分けたいんだ」

辛そうにこちらを見つめる彼から、溢れんばかりの愛情を痛切に感じる。「環くんが側にいてくれれば、苦しみも和らぐよ」 そう答えると、いつもの慈愛に満ちた表情に変わって。

「…うん、ずっと傍にいる」

どんなに辛いときでも、彼といれば幸せなひとときになってしまう。1秒でも長く、この時を終わらせたくなくて。重たい瞼が彼を覆い尽くすまで、ずっとその姿を見つめていた。




backtop