女の子のワクチン接種日の次の日は、副作用が出ることを想定して予めとんでもない勢いで仕事を終わらせておいてくれる。
「安心してください。今日はずっと俺があなたの傍にいるので」
そう言ってこちらを撫でてくる手に、胸がいっぱいになる。今やNo.2ヒーローとして常に忙しい彼にとって、一日分の休みをもぎ取ることは相当骨が折れるはずなのだ。私のためにごめんね、と言い出したいのをぐっとこらえて 「ありがとう」 と笑いかければ、彼も嬉しそうに微笑んだ。
ちょっとした家事を少しやってもらおうかと思っていると、何かを頼む前に
「洗濯やっときますね」
「これ片付けちゃっていいですか?」
こちらの意図を汲むかのように動いてくれる。しかも最速で。その最中も、定期的に女の子の様子を見に来たり声をかけたりと、気遣いを怠らない。その後も鎮痛剤を飲ませ、食べやすい料理を振る舞うなど体調の悪い人に対しての完璧な対応をしてくれる。The・看病してくれる恋人の理想像。
看病としての一連の流れが終わると、横になる女の子の横にちょこんと座って急にそわそわし始める彼。「どうしたの?」 と尋ねてみる。
「…俺、今日ちゃんと出来てましたか?」
そんな彼の言葉に疑問符を浮かべてしまう。この流れで言えばちゃんと看病出来ていたか、ということだろうか。あんなにも完璧な対応だったのに、何がそこまで不安なのか図りかねてしまう。女の子が動揺していると、困ったように笑う彼。
「…初めてだったんで、こういうの。一応、事前にサイドキック達からアドバイスを貰ってたんですけど、やっぱり少し自信なくて…正解が、分からないんです」
そこまで言われてハッとする。『初めてだった』『正解が分からない』その理由は、彼の生い立ちから考えれば容易に分かることで。彼の表情見れば、迷子の子供のように不安げに揺れる瞳が窺えて、胸がぎゅう、と苦しくなる。彼にどうにか安心して欲しくて、優しく抱き寄せる女の子。「今日1日、啓悟がいてくれて本当に助かったし、嬉しかった。正解なんて、きっとないよ。他の誰でもない貴方だから、こんな気持ちになるの」 宥めるように彼の背中をさする。すると、彼も女の子の背中へ腕を回す。
「…俺、貴女を好きになって、一緒にいられて…本当に世界一の幸せ者です」
それは、偽りなんて一切感じられない心からの言葉。「私もだよ」 精一杯の愛を込めて呟けば、優しい口付けが降り注いできた。