注射の副作用に苦しむ女の子と彼(荼毘)





彼が看病なんてしてくれるわけない、と最初から全く期待していない女の子。前日から副作用のことも考えて、薬や水、ゼリーなどをベッドの近くに用意しているので、1人でもそんなに苦労はしなくて大丈夫そう。…なのだが、副作用が出たその日、珍しく面倒見始める荼毘に動揺を隠せない。え?明日槍でも降るの?有り得ない現実を目の当たりにして脳内が追いつかない女の子。つい、「えっと、荼毘大丈夫?どこか調子悪いの?」 なんて皮肉めいたことを言ってしまう。

「は?お前泣かされたいのか?」
「あっ…!違うの!今のは間違い!…その、何で看病してくれるのかなって」

当然苛立つ彼に、慌てて訂正の言葉を連ねる。と、

「俺のモンは俺が管理するって決まってンだよ」

当然だろ、とでも言うかのように伝える彼。…相変わらず不思議な考え方だ。やはり、彼のことはいつまで経ってもよく分からないままなのだろう。けれど、どんな理屈だったとしても彼が傍にいてくれるということは素直に嬉しい。

最低限の看病を終えると、荼毘は突然上着を脱ぎ始める。その行動にギョッとして、「何してるの…?」 と恐る恐る尋ねれば、「寝る」 と返ってきてくるから更に謎が深まる。床の上に乱雑に上着を脱ぎ捨て、こちらに近づいてくる彼。何が起こるかわからなくてぎゅっと目を瞑っていると、ふと全身が何か温かな存在によって包み込まれる。ふわ、と香るこの匂いは、紛れもない彼のもの。もしかして今、抱きしめられてるの?彼に? どこか優しさを感じさせる彼の行動の数々が未だに信じられなくて…でも、やっぱり嬉しくて。照れ隠しのように

「…何で抱きしめてくれるの?これも看病?」

と言ってみる。しばらくの沈黙の後に帰ってきた言葉は、

「…さァな」

の一言。とっとと寝ろよ、彼は眠気混じりの掠れた声でそう呟くと、もう何を聞いても返事が返ってくることはなかった。本当に掴みどころのない人。でも、ふと見せるこういう部分がやっぱり好きで。この熱を手放したくない。そんな思いを込め、彼の腕の中で身を寄せる。悪寒によって寒気立つ体は、温かな彼の体温と混じりあって、やがて一緒になっていった。




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