蚊に刺されがキスマに見えちゃった(轟)





「…お、なんか首についてんぞ」

そう言って首元に手を伸ばす彼だけど、よく見たらそれは赤い痕。「…お前、それ…」彼は大きく目を見開いて

いつの間に誰かと付き合っちまったんだ!?」 「え?」
「もしかして俺、もう遅すぎたのか…?」
「と、轟くん落ち着いて、」
「わりぃが落ち着いてらんねぇ」
「えぇ…」

いつも冷静な彼が感情的になっていて女の子は困惑しちゃう。

「…俺にもチャンスをくれねぇか」
「チャンス?」
「あぁ…お前と付き合うチャンスだ。…もう恋人がいるのは分かってる。だけど俺は、」
「あの…恋人なんていないよ?」

話の腰を折ってそう言うと、目をぱちくりさせる彼。

「…え、でもその首元の痕は…」
「首元…あ!これは蚊に刺されだよ!」
「…かに?」
「そう!ただの虫刺され痕」
「………はぁ」

彼は安堵のためか、ずるりと床にしゃがみ込んで。「…そっか、良かった」 そのときの彼の微笑みは、本当に眩しかった。

ちなみにこの後、教室に蚊取り線香が鬼のように設置されたことにより、火災報知器が反応してしまう事件が起きます。(彼は反省文を書いた)




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