『他に好きな人ができたから』
その一言で呆気なくその人との繋がりが消えた。とても授業に出る気にはなれず、とある空き教室でサボっていると、背後でドアの開く音が。振り向かずとも、それが“彼”だとすぐに分かった。
「…なんで来たの?まさか心配になった?」
「…別に?たまにはサボりもいいかなって思っただけ」
たまにはサボりもいい。
彼に限って、それは有り得ない考え。だって彼はヒーロー科に入るため、どんな授業も怠らずにいつも一生懸命取り組んでいるのだから。そんな彼が授業をサボって、どこにいるかも分からない自分をわざわざ探しに来てくれたのかと思うと、申し訳なさを感じつつもつい嬉しくなってしまう。彼は素敵なヒーローになるだろうな、と思いながら窓辺で外を眺め続けていると、名前の右手側に彼も立つ。お互い顔も合わせず無言でいるけれど、その時間は、何故かとても落ち着く。
「彼ね、他に好きな人ができたんだって…私が悪いのかな?どう思う?」ふとそんなことを、 窓の外に視線を向けたまま、彼に向けて言ってみる。
「どう思うって……まぁ、名前を捨てるなんて相手も馬鹿なことするなとは思うよ」
彼の言葉には同情や哀れみなんて一切なくて、それでいてこちらの味方に立っていてくれていることを示唆するものだったから、すっかりモヤモヤが晴れていく。
「今戻ったら先生にサボりだって思われるよね?次の授業から参加しようかな」
「名前が体調悪そうだったから探しに行くって先生に言ってあるし、今戻っても別に大丈夫じゃない?」
「…あれ?心操くんサボりじゃなかったの?」
「……立ち直りオメデトウ。授業休んでまで来た甲斐あったよ」
揶揄うように尋ねれば、拗ねた声色でそう返ってきたから思わず笑ってしまう。彼が言ってくれたように、今から戻ろうか、と答えようとすると、ふと彼が口を開く。
「次はちゃんと名前だけを好きでいてくれるやつを選ぶんだな」
彼の言葉に、思わず踏みとどまり、「そんな人いるのかなぁ」なんてヘラりと笑ってみる。
「たとえば……………俺、とか」
その言葉に驚いて思わずバッと彼の方を見ると、彼は頬を染めながらこちらを見つめていた。窓辺からは、相変わらずギラギラとした太陽の光が射し込んでいる。だけど、どうしようもなく顔が熱いのは、きっと日差しのせいじゃない。