恋人に「最近ずっと他の子といるね」と指摘したら『もう好きな人変わったから』と言われて振られた。理由が理由なので悔しくて涙が止まらないし、寮に戻って人と顔を合わせる気にもなれないしで、教室で一人、机に突っ伏していた。すると突如、バサバサッと何かが落ちる音が聞こえてきて。
「……え、」
ふと顔を上げると、教室の入口に彼が驚いた表情で立っていた。彼はハッと我に返ると、落とした本も憚らずにこちらへ駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
「何があったの?」
「どこか怪我でもしたの?」
両肩を掴み、酷く慌てた様子でまくし立てる彼。その勢いにキョトンとしていると自分の行動に気づいた彼がバッと体を離して「ご、ごめん…」 と零す。最初はおろおろとしていた彼だけど、やがて名前の横の机の椅子を引くと、そこに座った。
「……俺でよければ、何があったか話してくれないかな 」
その声はとても優しかったけど、酷く真剣な顔をしている。「浮気した恋人に振られちゃって…」と泣きながら話してみる。
「君みたいな素敵な女の子を差し置いて別の子となんて…考えたくもないな」
返ってきたのは、怒りを滲ませた彼の声。それから嗚咽を漏らしながら恋人の愚痴も言ってしまうけれど、彼は穏やかな声で相槌を打ち、そっと背中を撫で続けてくれる。
だんだんと気持ちが落ち着いてきた後、彼にお礼の言葉を言おうとすると、不意に彼がこちらの手を取り、両手で包み込む。彼の顔を覗けば、意を決したような表情でこちらを見つめていて。
「俺なら、君にそんなは顔させない」
彼がそんなことを言うなんて思いもしなくて、思わず目を丸くする。普段の様子からは考えられないほどに自信ありげに振舞うから、どうしようもなく胸が高鳴ってしまう。
「君は、花が咲いたように笑うんだ。それだけで、俺は心の底から幸せになれる…。その顔をもっと俺に向けてくれたら、どんなに幸せかっていつものように考えてた。俺は、笑っている君を見るのが本当に大好きなんだ。」
目を細め、頬を染め、本当に愛おしそうに見つめる彼。とても穏やかな表情の彼だけど、こちらを見つめる瞳は、隠しきれない熱を帯びていていた。
「俺は君の隣に立つ男としてはまだ頼りないかもしれないけど、君を笑顔にし続ける努力は絶対に怠らないよ。…どうか俺に、君の傍にいるチャンスをくれないかな」
彼が握り締める手を強め、全てをあたたかく包み込んでくれる。この時にはもう既に、目の前の彼のことだけで胸がいっぱいになっていた。