彼氏の浮気が発覚してバーでヤケ酒していると、
「何してんの」
と彼の声がした。彼の方を向いて、「聞いてくれるの〜?」と言いニコニコしていると、「うわ酒くさ」なんて言って顔を顰めてくる。名前は気づいていないけれど、バーの中にいる男の何人かが彼女を狙ってることに彼は目敏く気づき、名前をとりあえずアジトまで運ぶことを決意。適当に金を置いて手袋を着けると、名前をおぶってバーの外へ。
名前はだんだん酔いが覚めてくると、「迷惑かけてごめんね…ありがとう」と彼に伝える。「別に今に始まったことじゃないし今更だろ。それより何かあったの」彼は心配そうに尋ねてきてくれる。「恋人が浮気してることが分かってついヤケ酒しちゃった」少し自嘲気味に言ってみる。すると、「は?」と言って急に立ち止まる彼。「そいつ絶対ぶっ壊す」…と、口には出さなかったが脳内で固く決意をすると、再び歩み始めた。代わりに、
「浮気とか信じられないな。お前変なのとこで思い詰めるとこあるから言っとくけど、お前は何も悪くないから。そこは気にすんなよ 」
という言葉を投げかけてくれる。彼がそんな慰めの言葉をくれるだなんて思ってなくて名前はつい嬉しくなってしまう。「弔くんの彼女になった子は幸せ者だね」冗談っぽく、ふふと笑いながら言ってみる。
「…じゃあ俺にすれば」
彼の言葉に思わず耳を疑う。まだほのかに酔っている頭を総動員させ、努めて冷静を装い、「どういう意味?」と零してみる。
「そのままの意味。俺を選べば、お前だけをずっと愛してやるよ。」
揶揄うようでも、嘘をついているようにも聞こえない言葉に、息が詰まる。彼がどんな表情をしているかは見えないけれど、ほんのり赤く色付いた彼の耳を見れば、何となく想像は難くない。つられてこちらも少し赤くなり、「それ冗談じゃなくて本当なの?」と聞いてみれば、
「疑うなら、確かめてみろよ 」
なんてずるい言い方してくるから、応えるほかなかった。