ヤンデレな彼に愛される(轟)





─名前 side─

私は彼が好きだ。それは紛れもなく本当のこと。だけど、彼と同じくらいの愛があるかと問われると、きっとそうじゃないんだと思う。

「必要がなければ、俺以外のやつとあまり喋らないでくれ」
「…どうして?」
「お前を愛してるからだ…他のヤツと話してるところ見ると、 嫌な気分になる」

お前は違うのか?、少し残念そうな顔で彼は尋ねてくる。そりゃあ、私だって嫉妬くらいはする。だけどさすがに、彼ほど極端ではない。

「…どうして、」
「…?なんだ?」

どうして彼は、“普通”の好きになってくれないんだろう。彼はいつだって、愛の言葉と共に私を縛って縛って、ゾッとするほど愛おしげに微笑む。好きだよ、好き。あなたのことは好き。だけどそこまで大きな愛は、私が担ぐには重すぎて。その束縛は、あまりにも息苦しくて。もう少しそれを軽くして、緩くして、“普通”の愛にできないのかな。

「…なぁ、お前は俺が好きか?」
「………うん、好きだよ」

これは嘘じゃない。でも、言葉って難しいよね。あなたの好きと私の好きは、同じ言葉でも、多分違う意味なんだ。

「…そうか」

彼はほっとしたような顔をして、頬を緩める。彼の顔が近づいてくれば、徐に目を閉じ、戸惑いもなくそれを受け入れる。好き、好きだよ、焦凍くん。私たちは恋人同士。なのに可笑しいね。何度唇や肌を重ねても、心は重ならないままなんて。 あなたと私の愛を1度一緒にして、上手く分けて、丁度よくなればいいのに。
…そうして今日も私たちは、いつまでもすれ違ったまま、片思いのまま。



─轟 side─

好きだ、好きだ、好きだ。お前だけが何よりも大好きだ。思いは日に日に増して、溢れ、溢れ返って、洪水のように押し寄せる。お前の行動の何もかもが可愛らしくて、どんな表情も魅力的で、 優しい声は俺をいつも癒してくれる。

「…なぁ、お前は俺が好きか?」

毎日のように尋ねるこの言葉。俺はいつだってお前に愛を囁くけれど、お前はこうやって聞かなければ答えてはくれないから。…わかってる。お前の愛は、俺ほど大きなものではないんだってことは。

「………うん、好きだよ」

少しの間の後に紡がれるそれ。“愛してる”という言葉が欲しいだなんて、高望みはしない。今はただ、好きな人に好きと返してもらえる、それだけでとても幸せで。

「…そうか」

思わず、頬が緩む。薄く開かれた唇を見ていれば、口付けたい衝動に駆られる。閉じた瞳を確認すると、激しくそれを重ね合わせた。

「…好きだ」「お前が好きだ、愛してる」

艶めいた吐息を漏らし、悩ましげに眉を寄せるお前を、優しく抱き寄せる。嗚呼、どれだけお前をこの腕に抱けば、愛を囁けば、口付けを交わせば、深く繋がれば、俺とお前の愛は同じになるんだろう。俺の愛は自分で支えるは重すぎて、お前を思う気持ちはあまりにも息が詰まりすぎる。 この溢れる愛をお前に注いで、俺と同じ位になればいいのに。
俺は今日もお前の隣で眠りにつく。いつか両思いになる、そのときを夢に見ながら。

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