ヤンデレな彼に愛される(治崎)






─名前 side─

「廻さん、今日はあの服着たいです!」

「…またあの服か」

「だって廻さんが初めて着せてくれた服ですからね」

お気に入りなんです、とドヤ顔をすれば、はぁ、とため息をつきつつも、彼は水色のワンピースをクローゼットから取りだし、私が座っているベッドの方まで手渡してくれる。いつ頃からだったか忘れたが、私は昔から足が不自由だった。けれど、それを悲しいだとか辛いだとか思ったことはない。私の恋人である彼と、彼の部下が嫌な顔一つせずに私の身の回りの世話をしてくれてくれていたから。

「…廻さん。なるべく皺にしたくないので、着替えるの少し手伝ってくれませんか?」

ワンピースを上から着るとき、座ったままの状態で腰の部分から脚まで引き下げていくと、皺になりやすい。甘えるような気持ちも込めて、私は彼に尋ねる。すると彼はスっと目を細め、私の方まで歩み寄ると、突として跨ってきた。そのまま彼が太腿の内側につつ、と人差し指を滑らせば、ピクリと体が跳ねた。

「…っ突然、なんですか…?」

「…誘っているのかと思ったが、違ったか?」

「さそ、 …!」

想像もしなかった言葉に頬が熱くなる。確かにショーツを晒した状態で助けを求めたのは、そう疑われても仕方ないことだったかもしれない。彼はポケットから錠剤を取り出すと、それを口に含んだまま私に口付ける。

「、ん…」

私は彼から移されたそれを、ごくんと飲み込んだ。

「…お前は俺をどう思っている?」

彼は唇を離すとそんなことを尋ねてくる。私はふわふわとする頭の中で、彼を見つめ、微笑む。

「…もちろん愛してますよ、廻さん」

昔も、今も、これからも。ずっとずっと、あなただけを。



─治崎廻 side─

お前は、誰にも理解されなかった俺を、唯一受け入れた。俺の狂気も、野望も、欲望も。全てを分かってくれた。俺はお前を手に入れたいと思った。だが、お前は既に別のヤツのものだった。俺は邪魔なヤツを全て消した。するとお前は俺を拒絶し、逃げ回った。俺は逃げ回る足を少々 “イジった”。俺はお前のために部屋を与えた。生活に必要な物も全て揃えた。それでもお前は泣いてばかりだった。『殺して』と懇願した。俺はお前を生かすためにクスリを飲ませた。様々な個性が蔓延るこの社会、記憶を捏造する薬など裏の世界じゃ手に入れることは難しくはなかった。新たな記憶を刷り込んで行く内に、お前はそれらが本物の記憶だと思うようになっていった。そして、かつての相手のことなどすっかり忘れ、 俺のことを愛するようになった。

「…廻さん。 なるべく皺にしたくないので、着替えるの少し手伝ってくれませんか?」

中途半端に服を着て脚を晒したまま、お前は呼びかける。…あの足を見ると、つい胸が騒いでしまう。お前は俺から一生逃れられることはないのだと分かるから。お前の足は俺の元へ留まるための、ただの飾り。その存在を確かめるかのようにするりと撫であげ、甘く囁けば、お前はいじらしく頬を染める。…アレを飲ませるのにいいタイミングだ。俺は定期的に服用させている薬を取り出し、口移しで飲ませる。ちなみに、これに疑問を抱かない為の洗脳はもう済んでいる。

「…お前は俺をどう思っている?」

「…もちろん愛してますよ、廻さん」

恍惚としてこちらを眺める瞳が何よりも愛おしい。飾りの付け根に手を這わせ、深く口付ければ、お前は更に深く溺れていく。…俺はたとえどんな手を使ってでも、お前を手に入れる。昔も、今も、これからも。ずっと、何度でも。

backtop