家で一人めそめそ泣いていると、窓からコツコツと音がする。これは、“彼”の訪問の合図。窓の鍵を開ければ、慣れた風に容赦なく部屋に上がり込んでくる彼。そしてこちらの泣き跡を見ると、ニヤリと笑った。
「なんだ、ついに別れたのか?」
他人事のようにケラケラ笑う彼にムッとして、「…浮気されて振られた」と不貞腐れたように呟く。それにピクリと反応する彼。まさか本当にに振られたとはおもってなかったし、自分が目をつけてる女の子が振られたことで自分も馬鹿にされたように感じられて、表情にこそ出さないが内心イラつく。しかしそれよりも、名前にこれ以上別の男の事で泣かれる方が嫌なので、一旦男のことは右に置いておき、瞬時に頭を切り替える。
「…お前、俺のモンになれ」
なんの脈絡もなく唐突にそう言われるもんだから、ぽかんとする。騙してるのかな、と思うけどこちらを見据える目が、いつものからかうようなものじゃないので少し動揺してしまう。努めて平静を保い、「荼毘って遊び人でしょ?また浮気されるのはやだよ」と答える。
「傷つくなァ。俺は意外と一途だぜ?」
ちなみにそう言う顔は、全く傷ついた様子ではない。そんな彼をジト目で見ていると、ツカツカこちらに歩み寄ってくる。行動の意図が読めなくて思わず構えていると、彼の手で目を封じられる。そして「急に何するの」という言葉を口に出す間もなく、唇に柔らかな感触が触れる。予想外のことに体を固まらせれば、角度を変えて何度も何度も口付けられ、それは徐々に深いものになっていく。息が苦しくなり、彼の胸を軽く叩くとやっと開放されて。
「…これはお前にしかやらねェよ」
耳元で甘く囁く彼。吐息混じりのその声はあまりにも色っぽくて、熱を孕んでいて、蕩けそうになる。彼の言葉は、行動は、どこから本当でどこまで嘘なのか全く掴めない。だけど、「もっとしたいか?」 と聞かれて頷いてしまえば、もうきっと、彼からは逃げられない…。