就寝前。ベッドの上に乗ると、壁を背に座って一息つく。スマホを開いてドラマを見ていると、 ふと肩に重い感覚が。
「弔くん?」
「…」
彼は黙ったままこちらの肩に凭れ、こてりと頭を乗せている。スマホを置き、横に流れた髪を耳にかけてやれば、紅の双眸と目が合った。
「弔くんって可愛いよね」
目尻を下げて笑うこちらに対して、彼は若干それをつり上げる。
「は?なに?俺が?」
「うん」
「…どういうとこが?」
「うーんなんだろう…猫、みたいで」
…ねこ、と独り言のように呟く彼はどう見ても不満げ。まぁたしかに可愛いはいいとしても、仮にも恋人相手に猫と言われるのはどうなのだろう。喜び…はしないかもしれない。そこまで酷く怒っていないのは分かっているので、やんわりと謝ろうと思い口を開くと、それよりも彼が言葉を発した。
「…それさ、褒め言葉のつもり?」
それは皮肉めいたものではなく、純粋に疑問を抱いているような訊き方。暫し悩んだ後出た答えは、 「…愛情表現?」 というなんとも定まらないもの。すると、先程まで不満げだった彼の表情が一変する。肩に預けていた頭を持ち上げると、真正面からこちらを見つめ、妖しく目を細めた。
「…ならもっと分かりやすいのくれよ。俺、そういうのよくわかんないからさ」
そういう彼の顔の表情には、何ともあざとい笑みが浮かんでいて。仕方ないなぁ、と思いながら 「…弔くんが好き」 恥ずかしながらも紡げば、「…まだわかんないんだけど」 なんて言って得意げな顔をしてくる。好きよりもさらに上の言葉を口ににするまで、彼の知らん振りは続いた。