1人ソファーで寛ぐ休日の午後。静かな空間でほんやりしていると、ガチャりという音と共に彼が部屋へ入り込んでくる。
「荼毘、おかえり」
…まあ相変わらず返事はない。
彼は黙ったままこちらへと足を進めると、そのままソファーに座り込んでくる。私の真横に、一寸の距離も置かず。その意外な行動に思わず彼の方を見れば、脚と腕を組み、目を瞑る様子が。
「…荼毘ってなんか、 たまに可愛いよね」
まだ眠っていないであろう彼に、ぼそりと呟く。
「…は?」
長いまつ毛を持ち上げたその瞳は、彼にしては随分大きく開かれていて。その顔も可愛いな、なんて思いながら彼の硬くしっかりとした髪をふわふわと撫でてみる。すると、先程までの可愛らしい顔は何処へやら。 丸い瞳は徐々に細められ、 唇は閉じられ。 感情の読めない表情の彼に、私やらかしたかな…、と内心後悔しつつ、冷や汗を流す。
「…煽ってんのか?」
静寂を破るその声にびくりと肩が揺れる。
「ご、ごめん…そんなつもりじゃ、」
次の言葉は、肩に手を回されたことへの驚き共に、喉奥に消える。首筋にすり、 と触れる指先からは2つの感覚を拾った。
「昨日で懲りたと思ったが…お前はまだ足りなかったらしいなァ」
急に変わった声色にハッとし、彼が指先で触れた位置を確認すると、そこには赤紫色の鬱血痕が。恐る恐る彼の顔を見れば、余裕の笑みが目に入って。
「…そっちの意味?」
「さァな。お前の解釈した方を教えろよ」
意地悪く訊いてくる彼に、こちらが敵うことは多分一生ない。悔しそうに見つめながら、
「…怒る方は嫌」
と渋々答えれば、 首筋を触れる手は後頭部へと回り、 彼の方を向かされた。唇に触れる柔い感触、反転する視界、軋むソファー、揺らめく蒼眸。
…それでも尚、このひとを可愛いと感じるなんて。本当にどうかしている。