「お先に失礼しました」
「お、りょーかい」
風呂上がりの挨拶しに行くと、彼はその場で仮面を外した。…本当に、彼は隠しているのが勿体ないくらいに顔が整っている。まぁ彼のファンが増えても困るし隠してるままでいいのかも…なんて思いながらその秀麗な顔を見つめていると、彼はこちらへ歩み寄り、流れるような動きで頬に口付けを落とした。その際、ふわりとした彼の髪が目に入る。そっとそれに触れれば、彼は不思議そうに顔を伺ってきて。
「圧紘さんってくせっ毛で可愛いですよね」
思ったままを口に出してると、彼は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「おいおい冗談だろ、それおじさんに言っちゃう?そりゃちょっとキツいもんがあるぜ?」
勘弁してくれよ、とでもいう風に髪をくしゃりと
掻く彼に苦笑する。
「おじさんとか関係ないですよ。好きな人だから可愛く思えてしまうんです」
多分ですけどね、そんな言葉を添えて微笑みかければ、彼は一瞬体を硬直させる。でもそれは本当に一瞬で、些細な仕草。次には片手の手袋を外すと、こちらの顎にその指先を添えてきて。
「…じゃあ、お前は死ぬまで可愛いままなんだろうな」
え、という言葉が漏れる前に彼はこちらに背を向け、 「風呂入ってくるわ」 なんて言いながらひらひらと手を振る。
…それって、それって。何だか遠回しにすごい発言をされたなと悶えながら、彼が風呂を上がるまでの時を過ごした。