こちらは『舞台裏のプロローグ』のあとがきになります。作品を読んでいない方は、読了後に読むことを推奨します。
そしてあとがきにもご興味持ってくださった方、ありがとうございます…!予想以上に長くなってしまいましたが、お付き合いいただけると嬉しいです。
〜目次〜
@ テーマについて
A括弧書きの表記
B文章表現について
C彼の記憶
D“自分”について
@テーマについて
この作品のテーマは、自嫉妬=B
自分の才能が怖い〜という意味での自嫉妬ではなく、言葉通り、自分自身に嫉妬すること。これを描写したいと考えた結果、
記憶を失った自分
↓嫉妬
記憶を失う前の自分
という構図が出来上がりました。
他者への嫉妬を超えて、自分にさえ嫉妬してしまう。そんな彼が見てみたいと思いました。
A括弧書きの表記
荼毘
この強調の意味は分かりやすく書いたつもりでしたが、改めて解説させていただきます。
荼毘∞彼=ィ記憶を失う前の荼毘
荼毘、彼(強調なし)→記憶を失った後の荼毘
この括弧書きの有無、女の子自身は全く意識していません。無意識に今の彼と過去の彼に向ける感情を使い分けてしまっているのですが、今回は分かりやすく強調して表記しました。そして読了している方はお分かりかと思いますが、女の子は記憶を失う前の荼毘に恋をしているのであって、今の荼毘に対してはそのような感情は持っていません(これについては後ほど解説)。もしお時間あればこのことを意識して、もう一度読んでいただければと思います。
B文章表現について
意識した点を少しご紹介。
・「燃やそうとすればするほど、消えるどころか逆に身を焦がし、己が焼き爛れていくだけだ」
彼の個性によって身を焦がされているという意味と恋焦がれて焼き爛れていくという2つの意味を兼ねてます。女の子のことを考えたくない、思考から消えて欲しい、と思えば思うほど、考えてしまって、頭から離れなくて。その感情の正体が分からないから更にイライラして、でもそれ以上に苦しくて、だからまた消そうとする。そんな無限ループに嵌っちゃってます。端的に表現すれば、めちゃくちゃ片思いに苦しんでる男の図、ですね笑
・「ぱちぱちと断続的に鳴り続ける黒焦げのそれが、俺の思考を肯定しているように感じられた。」
ぱちぱちと断続的になり続ける≠ニいうのは拍手≠表現しています。彼は、ぱちぱちと残り火が燃えている音が、自分の考えに対して賞賛の拍手を送っているように聞こえているんです。…黒焦げのそれが何かを意識して状況を想像してみると、ちょっとやばいですね。
C彼の記憶
このお話では結局、最後の最後まで荼毘は過去の自分を思い出すことはありません。ですが、実はその一切が消えてしまったという訳ではないんです。彼自身はそれを理解していませんが、無意識に体に染み付いていることを思わせる場面がいくつかあります。
・「いつからだったか?今となっては最早思い出せない。会った瞬間から言われていたような気もするし、いっそ遥か昔から言われ続けていたような気さえしてくる。」
→ここは分かりやすいので解説はありません。何となく、体に聞き慣れてる感があるんですね。
・弔くんと女の子の会話に違和感、不審感、気味悪さ感じる場面
→これは女の子が自分ではなく他の誰かが好きなのではないかと疑うきっかけになる場面でもありますが、それとは別に“自分”という存在が脅かされる危機感を無意識下で感じ取っています。記憶を取り戻したら、記憶を失った後に確立された彼の人格が消えてしまうから。とは言っても彼が失ったのは女の子との記憶だけ。つまり彼は、記憶を失った後に抱いた女の子への気持ちが失われることを忌避しているんです。
・ネックレス(首輪)について
ネックレスについて興味を示す荼毘。女の子がよく触っているから気にしていたというのもありますが、やっぱりその理由無くしても気になってるんです。そして『これはご主人様から離れないための首輪だ』というセリフ。これ、彼の回想でよく出てきていたと思います(確か3回)。彼はこの言葉について嬉しそうに話す女の子が印象に残っていたこと以上に、何故かそのセリフが離れない自分にもやもやしていたりします。でも、デジャブのような感覚には陥りません。ただ、頭から離れないだけで。
・「俺に首飾りの持ち主を重ねて好きだと伝えているだけに過ぎない」
この文、鋭い方は少し変だと思ったかもしれません。注目して頂きたいのが、首飾りの持ち主、という部分。普通なら、「首飾りを与えた人物」の方が適切な表現なはずです。首飾りは女の子のものなのに、なぜ彼は女の子を持ち主だと判断していないのか。それは彼の中で、
首飾り=首輪・・・主人が所有物に付けるもの
※イコール首輪になったのは、女の子の発言を聞いたから
という関係が成り立っており、首飾りは女の子が相手に貰ったもの≠ナはなく女の子を所有物と示すために主人がつけたもの≠ナあって、結果的には「首飾り=主人のもの」と考えているわけです。もちろん、彼がここまで深く考えて発言しているわけではありません。無意識下で、まるで常識かのようにこのような考えを持ち合わせている上で、ああいった発言が出ています。この歪な思考が何の違和感もなく定着しているあたり、やはり彼は彼なんですよね。
D“自分”について
最初の方でも言いましたが、女の子は記憶を失う前の荼毘を求めています。つまり、記憶を失う前と後の彼とを、別の人物として認識しているんです。そこで少し考えて欲しいのが、“自分”とは何か。記憶を失う前の彼と失った後の彼は、同一人物だと思いますか?自分との思い出を何一つ持っていない彼を、自分が好きになった彼であると思えますか?女の子はそうとは思えずに、(早く思い出して欲しい) (あのときの彼に戻って来て欲しい) という思いに囚われています。そしてそれは、今と昔の彼を別の者として捉えている事になるのではと思います。彼視点でもそうですね。彼の方も、記憶を失う前と記憶を失った今の自分は別の存在だと考えています。嫉妬やその人物を殺した℃鮪タもありますし、「だかな、それは俺じゃねェ。」とはっきり言っているのもその証拠です。
最後に。これを読んでいるあなたはどう思いますか?最愛の恋人が記憶を失っても尚、それが自分の愛した彼と同じ人物であると自信を持って言えますか?確かに自分を愛してくれたのは、見た目や細胞に至るまで何一つ変わっていない彼。だけど、自分との記憶がない。この彼は本当に、前の彼と同一人物なのでしょうか。“自分”とは一体なにか。何が自分を定義するか。記憶は違えど、姿形が同じなら自分?それとも、記憶が失われれば別の自分になるのか?それが相手の立場だったら、自分の立場だったら、それぞれどう感じるのか?答えのない問いですが、少しだけ考えてみるのも面白いのではないかと思います。
とても長いあとがきにまでお付き合い頂きありがとうございました!
もしここで書いたこと以外に気になる点ありましたら拍手 又は mail でご意見いただければ回答します。
また最後の問い答えが出た方は、個人的に興味があるのでお聞かせくだされば嬉しいと思います。
back / top