友人に頼まれた数合わせの合コン、参加してもいいか聞いてみた(郷田龍司)





「アホか」

第一声、彼が漏らしたのはそんな台詞。それは、愚問だと言わんばかりの言い方と、視線と、表情で。

「そんなんワシ通したら行けるもんも行けんわ。自分の女、わざわざ飢えた獣の前に差し出す野郎がどこにおんねん」

要約すると、“許可するわけがない” ということだろう。

「そう言われれば、そうですね……?」
「せや。もしほんまに行く気やったら、せめて隠すくらいの努力せなあかんやろ」

バレたら洒落にならんけどな。
……ぼそりと呟かれた最後の言葉は聞こえなかったことにして。結果的には友人の期待には沿えなくなってしまったが、彼が引き止めてくれた事実は、どこか嬉しく感じ。努めて笑みを堪えれば、なんだか微妙そうな表情になってしまう。

しかし、彼はその表情を別の意味に捉えてしまったらしく。スッ、と目を細めると、不意にこちらの顎に手を添え、視線が合うよう軽く持ち上げてくる。

「……出血大サービスや。 帰ったらどないなってもええっちゅう覚悟があるんやったら、今回だけは特別に許したる」

どや名前?、と語りかけてくる彼は、今すぐこちらを射殺さんばかりの鋭い視線で、こちらを見つめてきて。

「……せっかくですが、丁重にお断りさせていただきます」 冷や汗をかきながら恐る恐るそういえば、「何や、つまらん」 言葉とは裏腹に、満足そうに笑って頭を撫でた彼がいたから、これで正解だったんだ、と全力で安堵したのは言うまでもない。




backtop