友人に頼まれた数合わせの合コン、参加してもいいか聞いてみた(秋山駿)





「……数合わせの、ね」

彼から笑顔が消え、色々な意味でどきりとする。
火をつけたばかりの煙草を灰皿に押し潰すと、視線で向かいのソファーに座るようと促したので、大人しくそれに従う。

「……逆にさ、なんでそれならいいって思ったのか君に聞きたいんだけど。相手は出会い求めて来てる訳でしょ?そういう気がない君が行ったってどっちにもメリットがないじゃない」

まるでビジネスの話をするかのように淡々と語る彼だけど、語気の節々に嫌味が滲んでいて。平静を装っているみたいだけど、わかってしまう。多分、彼は怒っている。かなり。

彼の過去を考えればこのような発言は軽率であったと、早めに気づくべきであった。心の中で反省をしていると、どうやら彼は私の落ち込み様に気がついたようで。俯く頭を優しくひと撫でしたので、思わず顔を上げると、そこにはどこか困ったような顔をした彼がこちらを見つめている。

「……って、なんかカッコつけて言ってみたけど。結局、俺が君を行かせたくないだけなんだけどね」

そうやって無理して笑おうとする彼に胸が苦しくなって、「不安にさせるようなこと言ってごめんなさい、秋山さん」と零すと、テーブル越しにこちらを抱き寄せる彼。

「……俺の方こそごめんね。でも、他の男に色目なんて使わないで。俺だけを見て?俺も、ずっと名前ちゃんだけを見てるから」

どこか余裕がなくて、不安定な彼だけど、そんなところも含めて愛おしさが募って。彼から伝わる体温が、胸にじわじわとあたたかな感情を広めていった。






おまけ

※付き合ってまだ日が浅いver.の秋山さん


「え、合コン?」
「そうなんです。友達がどうしてもって……」
「相手がいる名前ちゃんに頼むなんて、よっぽどだなぁ……あ、それならうちのキャストに何人か声掛けてみようか?出会いがないって嘆いてる子、実は結構いたりするんだよね」
「本当ですか?ありがとうございます、秋山さん!」
「いやいや、こんなの感謝される内に入らないって。……それよりさ。名前ちゃんは俺がいるんだから、そういうのはちゃんと断らなきゃダメじゃない」
「う...ごめんなさい……」
「えー?本当に反省してる?」
「してます!ものすごく反省してます!」
「本当の本当に?」
「本当の本当です!!」
「それって、俺のお願いなんでも聞いちゃうくらい?」
「はい、もちろんです!」
……。
「…………あ」
「……はは、そっかぁ。いや参っちゃうなぁ。まさか名前ちゃんがそこまで反省してくれるなんて、俺って愛されてるなぁ」
「あ……あの、これは……」
「まぁ俺はそこまで要求するつもりはなかったんだけど、 名前ちゃんにここまで言われちゃあ、さすがに無下に出来ないし……」
「え、あ、秋山さ、!?」
「……今夜はたっぷり俺のお願い、聞いてもらおうか?」
「……!」




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